松永総研

北浜の虎と呼ばれた男

原油&穀物市場「ウクライナ情勢の緊張に反応」

 NATOの高官やウクライナ大統領が、ロシア軍のウクライナ侵入を非難しており、30日のEU臨時首脳会議では、ウクライナ東部での戦闘が激化すれば、ロシアに対する制裁を強化することで合意されました。そうしたロシアへの経済制裁懸念に先週末の原油、石炭、小麦などが反応して上昇した模様。ロシアへの経済制裁がさらに拡大することになれば、プーチン大統領が、ロシアからEU向けの天然ガスを遮断する可能性が高まります。そうなると、天然ガスの代替燃料として原油、石炭へのニーズが高まります。米エネルギー情報局(EIA)によると、2013年に欧州大陸で消費された天然ガスの約3分の1がロシア産であったとの報告もあることから、ロシアからの天然ガス供給を絶たれると、EUのエネルギー供給が大打撃を受けることになります。しかも、これから北半球が秋を向かえ、気温低下が始まることから、住宅用暖房燃料需要が増加する季節です。天然ガスの代替燃料として有力視されているのが石炭ですが、天然ガスや石炭の価格が上昇すれば、原油価格の上昇も避けられなくなります。ウクライナは、トウモロコシ輸出で世界3位、小麦輸出で世界6位となることから、穀物市場への影響も注目する必要がありそうです。また、ロシアは、白金生産でも世界第2位となり、世界生産の約9%を占めます。

ロシアとウクライナの首脳会談が今月26日に開催されたものの、その直後からロシア軍のウクライナ侵入が指摘されていることから、ロシアへの経済制裁は避けられないと考えるべきかもしれません。今後の商品市場では、ロシア・ウクライナ情勢の緊張に関する銘柄に注目することも一考ではないでしょうか。

海外市況

 S&P500は0.3ポイント高の2003.37ポイント。NYダウは18ドル高の1万7098ドル。米個人消費(7月)は、前月の0.4%に対して-0.1%となり、市場予想平均の0.2%を下回りました。また、米個人所得(7月)も、前月の0.4%に対して0.2%となり、市場予想平均の0.3%を下回りました。しかし、シカゴ購買部協会景気指数(8月)が前月の53.6ポイントに対して64.3ポイントとなり、市場予想平均の56.5ポイントを上回りました。ミシガン大学消費者信頼感指数(8月)も、前月の79.2ポイントに対して82.5ポイントとなり、市場予想平均の80ポイントを上回りました。7月の米経済指標が冴えない内容となったものの、8月の経済指標が市場予想を大きく上回る内容となったことが好感されて米国株が上昇。ユーロドルは、ゴールドマン・サックス・グループがユーロ相場の見通しを下方修正したことも影響して下落。また、今週4日にECB金融政策決定会合が控えていることもユーロ売りを誘っている模様。

 原油市場は、ウクライナ情勢の緊張に反応して上昇。30日のEU臨時首脳会議で、ウクライナ東部での戦闘が激化すれば、ロシアに対する制裁を強化することで合意しました。また、EU首脳は、欧州委員会に対して制裁の提案を1週間以内に行うよう求めております。NATOは、1000人以上のロシア兵がウクライナ領内で活動しているとの見解を発表しており、ウクライナ大統領も、ロシア軍部隊がウクライナ領内に侵入したとして激しく非難していることから、ロシアへの経済制裁懸念が高まっており、原油市場を大きく押し上げる要因となっているようです。

 NY金は、ウクライナ情勢の緊張が好感されたものの、良好な米経済指標や、対ユーロでのドル高に圧迫されて小幅下落。

 シカゴ小麦は、クライナ情勢の緊張に反応して8週間ぶりの高値にまで上昇。シカゴコーンも一時3.69ル付近まで上昇。ここに来てウクライナ情勢の緊張が一段と高まっており、EUからロシアに対する追加経済制裁の可能性が高まってきただけに、ロシアやウクライナから西側諸国などに供給されている小麦、トウモロコシ、白金、原油、天然ガスなどへの供給逼迫懸念が今後の注目点となるのかもしれません。

後場市況1

 NYダウの電子取引は、今朝から小動きです。日経平均は30円安付近で推移。ドル円が今朝から15銭ほど円安に向かい、103円85銭付近で推移。ユーロドルは、やや弱含みです。NY原油とブレント原油の電子取引が今朝から25セントほど上昇し、東京ガソリンも今朝の寄り付き後から400円ほど上昇。14:30時点、東京金7円高、東京白金8円高、東京ガソリン300円高、東京ゴム1.0円安です。

今週26日のロシアとウクライナとの首脳会合により、会合直後はウクライナ情勢の改善が期待されたものの、その後も情勢悪化が続いております。ウクライナのポロシェンコ大統領は28日、ロシア軍部隊がウクライナ領内に侵入したとして激しく非難しております。NATO高官からは、1000人以上のロシア兵がウクライナ領内で活動しているとの見解を発表。ウクライナ政府は28日、国境近くの港湾都市ノボアゾフスクと周辺の村をロシア軍が制圧したと発表しております。ウクライナ情勢は、今週26日の首脳会合以前より悪化しているように感じられます。ドイツのメルケル首相は28日、EUがロシアに対する経済制裁の強化を話し合う予定だと述べております。ロシアとウクライナとの首脳会合でも情勢が改善されなかったことから、来週は、ロシアに対する経済制裁に注目が集まりそうです。商品市場では、原油やパラジウム、白金といったロシアからの輸出製品銘柄への警戒が必要かもしれません。

ゴム市場分析パート2「エボラ出血熱感染者が2万人に達する可能性」

 最近、エボラ出血熱の感染拡大により、マレーシアなどのゴム手袋メーカーの株価急騰が少し話題となっております。株価急騰の原因は、感染拡大を防ぐために、医師や多くのゴム手袋が必要とされているからです。また、東京株式市場では、デング熱感染が1名確認されたことから今週27日のフマキラー社株が急騰し、感染者数がさらに2名確認されると翌28日の同社株がストップ高を交えて高騰しました。デング熱は、蚊が媒介して感染することから、フマキラー社の株価が高騰したようです。しかし、今回の国内でのデング熱感染と西アフリカのエボラ出血熱感染とでは、感染拡大のスケールが違います。

世界保健機構(WHO)は昨日、エボラ出血熱の感染者数が今後9ヶ月以内に2万人に達する可能性があるとの見通しを発表しました。エボラ出血熱の感染による死亡率が7割ほどとされていることから、感染者数が2万人達することになれば、死者数が1万4千人に達する可能性もあります。また、WHOは、感染拡大を阻止するために約5億ドル(約520億円)の資金が必要になるとの見解を発表しました。WHOは昨日、アフリカ西部のギニア、リベリア、ナイジェリア、シエラレオネの4カ国で、昨年12月から今週28日までの感染者数を3069人と発表しました。8月21日時点でのWHOによる感染者数の発表が2475人ですから、この1週間ほどで感染者数が594名も増加しました。WHO発表による死者数の発表は、8月6時点の932人から、8月28日時点で1552人にまで増加し、この3週間ほどで死者数が620人増加したことになります。西アフリカにおけるエボラ出血熱の感染拡大は、昨年12月から始まりましたが、今月になって感染ペースが加速しております。そしてWHOは、「感染の激しい地域では、感染者数は現在報告されている数字の4倍に達している可能性がある」との見解を示しております。現地では、医師・ゴム手袋・ワクチンが不足しているために、感染拡大が止められない状態が続いております。

ゴム手袋が天然ゴムから生成されることから、エボラ出血熱の感染拡大により、天然ゴム需要の拡大も予想されます。前回、マレーシアのゴム手袋業界が特需に沸いたのは、WHOが2009年4月に鳥インフルエンザの緊急事態を宣言した時であり、その時は、天然ゴム価格も上昇傾向を続けました。今回のWHOの感染見通しを見る限り、以前の鳥インフルエンザのときを上回るゴム手袋業界の特需が起こる可能性があります。過去には、エイズが世界的に騒がれ始めた時にコンドーム業界の特需が起こり、日本のコンドームメーカーである岡本理研ゴムの株価が高騰するとともに、天然ゴムが上昇を続けた事を記憶している方も多いのではないでしょうか。エボラ出血熱の感染拡大は、アフリカ西部のギニア、リベリア、ナイジェリア、シエラレオネに集中しているものの、それ以外の複数のアフリカ諸国で感染が報告されております。

供給過剰を背景に下落を続けている産地現物価格ですが、記録的な価格にまで下落したことで、生産高見通しがここに来て大きく変化し始めております。国際ゴム研究会(IRSG)は今月13日、今年の天然ゴムの世界需給が、5月発表時での71万4000トンの供給過剰予想から37万1000トンの供給過剰予想へと、大幅に下方修正して発表しました。たった3ヶ月間でここまで生産高見通しが下方修正された原因は、5月ごろからの安値が原因とされております。IRSGは、来年度分の供給過剰予想を、今年より46%減少して20万2000トンと発表しました。世界の天然ゴム生産高が2012年時点で1138万トンですから、15年度に対して20万トン程度の供給過剰予想なら、需給がほぼ均等しているとみるべきでしょう。産地現物価格が今後も現在の低価格を続けることになれば、生産高見通しがさらに下方修正されて供給不足に転じる可能性もあります。それにエボラ出血熱の感染拡大に伴うゴム手袋の需要増加が加われば、ゴム価格が急騰する可能性もあります。それだけに、今後の東京ゴムは注目ではないでしょうか。

ゴム市場分析

 今週の東京ゴムは、タイ政府が25日に20万トンの天然ゴムの国家備蓄売却を承認したことから、翌26日の東京ゴムがサーキット・ブレーカーを交えての急落となり、同日の上海ゴムも大きく下落しました。それでも産地現物市場の下落が限定的であったことが印象的でした。タイ・ハジャイのRSS3号は、先週22日が55.61バーツであり、28日時点でも55.06バーツを保っております。また、シンガポールゴムのRSS3号は、22日の180.0セントに対し、28日時点でも179.5セントですから、1週間前とほぼ同じ水準です。しかし、タイ輸出業者の8~9月積み・FOBオファー価格(RSS3号)は、22日のキロ=180セントから175セントにまで下落しました。このオファー価格を円換算すると、181.7円となります。これに輸入諸経費を加えると、輸入採算価格が約191円となります。東京ゴムの当月限が186円付近で推移していることから、輸入採算価格を5円ほど下回っております。タイ政府が備蓄在庫売却を承認したことが伝わった時は、インパクトが大きく感じたものの、年初から何度か売却の可能性が取りざたされていたことから、それほど新鮮味がなかったのかも知れません。

1年半ほど前に、価格てこ入れ政策の一環としてタイ政府が農家から天然ゴムを買い上げたときの価格が106バーツであり、現在は52バーツ付近で推移しております。当時は、100バーツ付近にまで価格が下落して農家の生活を苦しめているとしてタイ政府が農家から天然ゴムの買い上げに動きました。また、昨年8月3日からタイのゴム農家による大規模デモが行われたことに対してタイ政府が昨年9月6日に、農家からキロ=90バーツで天然ゴムを買い取る事で合意し、大規模デモが一時的に静化されました。しかし、その数日後にタイ政府が一度決定した農家との合意案を一方的に破棄し、農家への補助金を当初計画の2倍に引き上げることで埋め合わせました。それに生産者が反発して大規模デモを実施し、同月16日にゴム農家約1000人と警察隊300名が衝突する事態に陥ったことは、記憶に新しいところでしょうか。その後、首都バンコクにもゴム農家によるデモが拡大しました。それと時を同じくして、民主党のステープ元副首相が大規模な反政府デモを起こし、のちにインラック政権を崩壊に導くことになりました。その反政府デモのリーダーであるステープ元副首相の支持基盤がタイ南部であることから、ゴムの価格てこ入れを訴えてデモを行っていたタイ南部のゴム農家がそのままステープ元副首相率いる反政府デモに合流し、インラック政権を崩壊に導きました。そうした意味でも、タイ南部のゴム生産者は、インラック政権崩壊の立役者的存在でもありました。しかし、軍部による新政権が政府備蓄売却を承認したことから、現地では、「何のためにデモに参加して前政権を倒したのか?」という生産者の苦悩の意見が多く伝わっております。下記のチャートは、シンガポールゴムと東京ゴムのチャートですが、東京ゴムのチャートが下げ止まりの様相を呈している反面、シンガポールゴムのチャートは、いまだ下落が止まらないように見えます。アベノミクスによる円安進行の流れが両チャートの形の違いの原因となっております。

これまでのタイ政府と生産者を振り返ると、「産地現物価格が100バーツ付近まで下落したときに、タイ政府が農家から天然ゴムを買い上げて価格てこ入れ策を実施。→90バーツにまで下落したときに生産者による大規模デモが発生→反政府でデモの拡大により、事実上の無政府状態に突入→軍部がクーデターを起こし、軍部による政権が誕生→現在の産地現物価格が52バーツ付近で推移」となり、天然ゴム生産者の苦悩が感じられます。タイ南部では、天然ゴムとパームヤシが主生産物とされております。パームヤシは、価格上昇により大手農家の増益がこのところ伝えられております。それだけに、天然ゴム農家への支援が求められているようです。今年5月にタイで軍事クーデターが発生し、軍部がタイ国王軍政権の成立を宣言したものの、これまで無政府状態が続いておりました。しかし、今月21日に軍政トップのプラユット陸軍司令官が第29代首相に指名され、新たな首相が誕生し、9月に新政権人事が発表される予定です。新たに始動するタイ新政権がどのような方針を打ち出すかが、今後の天然ゴム市場にとって重要となりそうです。産地現物価格が記録的な安値に沈んでおり、東京ゴムが輸入採算コストを割り込んでいることから、東京ゴム市場への注目も一考ではないでしょうか。


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海外市況

 NYダウは、中盤で1万7000ドル付近まで失速する場面もありましたが、42ドル安の1万7079ドルで取引を終えました。ドル円は小動きとなり、ユーロドルは下落しました。S&P500は1996.74ポイントで取引を終え、大台の攻防が続いている模様。米第2四半期GDP(改定値)が市場予想の3.9%を上回る4.2%となり、速報値の4.0%を上回りました。米国株は、GDPや週間新規失業保険申請件数などの経済指標を好感したものの、ウクライナ情勢の緊張に圧迫された模様。ウクライナのポロシェンコ大統領は28日、親ロシア派を支援するため、ロシア軍部隊がウクライナ領内に進入したとして激しく非難しました。NATOからは、1000人以上のロシア兵がウクライナ領内で活動しているとの見解を発表しております。ロシアとウクライナの首脳会談を終えたばかりですが、再びウクライナ情勢の緊張が高まりました。こうしたウクライナ情勢の緊張にNY金やNY原油も反応。

NY金は、ウクライナ情勢の緊張に反応してNY市場の取引開始前に一時1297ドル付近まで上昇しましたが、その後、対ユーロでのドル高が進み、ドル高圧力により失速し、現在の電子取引では昨日15時半比2ドル高の1291ドル付近で推移。

原油市場では、NY原油が上昇した反面、ブレント原油が小幅下落しました。NY原油は、米GDPの改善やウクライナ情勢に反応して上昇。一方、ブレント原油は、ウクライナ情勢の緊張が好感されたものの、冴えないユーロ圏経済指標に圧迫されたようです。

本日の注目は、ユーロ圏消費者物価指数(8月)の発表となりそうです。ジャクソンホールでのドラギECB総裁の演説でユーロ圏の追加緩和期待が高まったものの、今週になり、ロイター通信からの報道で追加緩和期待が後退する動きがありました。今週27日にロイター通信から、「29日発表の8月のインフレ率によってユーロ圏がデフレに向かって進んでいることが示されない限り、ECBは来週の政策委員会で新たな措置を打ち出す公算は小さい」と報じられたことを受けて、追加緩和策期待が後退しただけに、今夜の発表が注目されております。特にドル相場の影響を受けやすいとされる金相場などは、今夜の発表が気になるところでしょうか。

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