NYダウは、先月下旬ごろから急落を続けたものの、今月8日から急反転して安値から750ドルほど上昇し、昨日時点で1万6979ドルまで上昇。NYダウもS&P500も最高値に迫る動きを見せているものの、それでも失速を続ける原油市場の地合いの悪さが気になります。昨夜のNY原油は、予想外の在庫減を好感して小幅上昇に転じたものの、この2か月間で15ドルほど下落したトレンドは継続されている模様。イスラエルやイラクなど中東の地政学的リスクの高まり、ロシア・ウクライナ問題によるロシアからユーロ圏へのエネルギー供給への不透明感など、原油市場をサポートする要因が複数あるものの、米国や大西洋周辺国での在庫のダブつき、ユーロ圏経済の成長鈍化など、在庫の多さや需要の弱さが原油市場の圧迫要因となっている模様。

 ここにきてリビアからの石油供給に新たな動きが見られたようです。イタリアの石油タンカーが20日未明、リビアのエスシデル石油ターミナルに到着。同タンカーは約60万バレルの原油を積み、イタリアのトリエステ港に向かう模様。この石油ターミナルはリビア最大であり、2013年7月以降、武装勢力の掌握により石油輸出が滞っておりました。また、来週には日量15万バレルを生産する油田「ワハ」を中心に、エルシデル石油ターミナルに供給するための採掘が再開されるようです。リビア最大の油田「シャララ」も生産を再開しており、複数の輸出港が稼働するようになり、リビア全体の原油生産量は現在、日量55万バレルと、5月下旬に比べ4倍近くに増加。まだ2~3年前の3分の1程度の輸出量ですが、主力ターミナルからの石油輸出が13か月ぶりに開始される見通しとなり、主力油田も稼働再開している事から、輸出量が今後も増加することが予想されます。

 内部要因では、NY原油のファンドなど大口投資家の買い越し枚数が今年6月に過去最高を記録したものの、その後、7週間連続で減少を続けており、ファンドの手仕舞い売りの勢いが止まりません。ファンドの買い越し枚数が過去最高を記録してからの手仕舞い売りの流れですから、こうした流れに逆らわない方がいいのかもしれません。ウォール街の古いことわざでは、「落ちてくるナイフは掴むな、床に突き刺さったナイフを拾え」とあるように、この2か月間で15ドルほど下落しているNY原油は、「落ちてくるナイフ」であり、床に突き刺さってから買い拾うことが懸命ではないでしょうか。また、過去最高のファンド買い越し枚数から7週間連続で手じまい売りが続いている事からも、「床に突き刺さったナイフを拾え」の如く、ファンドの手仕舞い売りが止まってから買い拾う事も一考ではないでしょうか。