今週の東京ゴムは、タイ政府が25日に20万トンの天然ゴムの国家備蓄売却を承認したことから、翌26日の東京ゴムがサーキット・ブレーカーを交えての急落となり、同日の上海ゴムも大きく下落しました。それでも産地現物市場の下落が限定的であったことが印象的でした。タイ・ハジャイのRSS3号は、先週22日が55.61バーツであり、28日時点でも55.06バーツを保っております。また、シンガポールゴムのRSS3号は、22日の180.0セントに対し、28日時点でも179.5セントですから、1週間前とほぼ同じ水準です。しかし、タイ輸出業者の8~9月積み・FOBオファー価格(RSS3号)は、22日のキロ=180セントから175セントにまで下落しました。このオファー価格を円換算すると、181.7円となります。これに輸入諸経費を加えると、輸入採算価格が約191円となります。東京ゴムの当月限が186円付近で推移していることから、輸入採算価格を5円ほど下回っております。タイ政府が備蓄在庫売却を承認したことが伝わった時は、インパクトが大きく感じたものの、年初から何度か売却の可能性が取りざたされていたことから、それほど新鮮味がなかったのかも知れません。

1年半ほど前に、価格てこ入れ政策の一環としてタイ政府が農家から天然ゴムを買い上げたときの価格が106バーツであり、現在は52バーツ付近で推移しております。当時は、100バーツ付近にまで価格が下落して農家の生活を苦しめているとしてタイ政府が農家から天然ゴムの買い上げに動きました。また、昨年8月3日からタイのゴム農家による大規模デモが行われたことに対してタイ政府が昨年9月6日に、農家からキロ=90バーツで天然ゴムを買い取る事で合意し、大規模デモが一時的に静化されました。しかし、その数日後にタイ政府が一度決定した農家との合意案を一方的に破棄し、農家への補助金を当初計画の2倍に引き上げることで埋め合わせました。それに生産者が反発して大規模デモを実施し、同月16日にゴム農家約1000人と警察隊300名が衝突する事態に陥ったことは、記憶に新しいところでしょうか。その後、首都バンコクにもゴム農家によるデモが拡大しました。それと時を同じくして、民主党のステープ元副首相が大規模な反政府デモを起こし、のちにインラック政権を崩壊に導くことになりました。その反政府デモのリーダーであるステープ元副首相の支持基盤がタイ南部であることから、ゴムの価格てこ入れを訴えてデモを行っていたタイ南部のゴム農家がそのままステープ元副首相率いる反政府デモに合流し、インラック政権を崩壊に導きました。そうした意味でも、タイ南部のゴム生産者は、インラック政権崩壊の立役者的存在でもありました。しかし、軍部による新政権が政府備蓄売却を承認したことから、現地では、「何のためにデモに参加して前政権を倒したのか?」という生産者の苦悩の意見が多く伝わっております。下記のチャートは、シンガポールゴムと東京ゴムのチャートですが、東京ゴムのチャートが下げ止まりの様相を呈している反面、シンガポールゴムのチャートは、いまだ下落が止まらないように見えます。アベノミクスによる円安進行の流れが両チャートの形の違いの原因となっております。

これまでのタイ政府と生産者を振り返ると、「産地現物価格が100バーツ付近まで下落したときに、タイ政府が農家から天然ゴムを買い上げて価格てこ入れ策を実施。→90バーツにまで下落したときに生産者による大規模デモが発生→反政府でデモの拡大により、事実上の無政府状態に突入→軍部がクーデターを起こし、軍部による政権が誕生→現在の産地現物価格が52バーツ付近で推移」となり、天然ゴム生産者の苦悩が感じられます。タイ南部では、天然ゴムとパームヤシが主生産物とされております。パームヤシは、価格上昇により大手農家の増益がこのところ伝えられております。それだけに、天然ゴム農家への支援が求められているようです。今年5月にタイで軍事クーデターが発生し、軍部がタイ国王軍政権の成立を宣言したものの、これまで無政府状態が続いておりました。しかし、今月21日に軍政トップのプラユット陸軍司令官が第29代首相に指名され、新たな首相が誕生し、9月に新政権人事が発表される予定です。新たに始動するタイ新政権がどのような方針を打ち出すかが、今後の天然ゴム市場にとって重要となりそうです。産地現物価格が記録的な安値に沈んでおり、東京ゴムが輸入採算コストを割り込んでいることから、東京ゴム市場への注目も一考ではないでしょうか。


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