最近、エボラ出血熱の感染拡大により、マレーシアなどのゴム手袋メーカーの株価急騰が少し話題となっております。株価急騰の原因は、感染拡大を防ぐために、医師や多くのゴム手袋が必要とされているからです。また、東京株式市場では、デング熱感染が1名確認されたことから今週27日のフマキラー社株が急騰し、感染者数がさらに2名確認されると翌28日の同社株がストップ高を交えて高騰しました。デング熱は、蚊が媒介して感染することから、フマキラー社の株価が高騰したようです。しかし、今回の国内でのデング熱感染と西アフリカのエボラ出血熱感染とでは、感染拡大のスケールが違います。

世界保健機構(WHO)は昨日、エボラ出血熱の感染者数が今後9ヶ月以内に2万人に達する可能性があるとの見通しを発表しました。エボラ出血熱の感染による死亡率が7割ほどとされていることから、感染者数が2万人達することになれば、死者数が1万4千人に達する可能性もあります。また、WHOは、感染拡大を阻止するために約5億ドル(約520億円)の資金が必要になるとの見解を発表しました。WHOは昨日、アフリカ西部のギニア、リベリア、ナイジェリア、シエラレオネの4カ国で、昨年12月から今週28日までの感染者数を3069人と発表しました。8月21日時点でのWHOによる感染者数の発表が2475人ですから、この1週間ほどで感染者数が594名も増加しました。WHO発表による死者数の発表は、8月6時点の932人から、8月28日時点で1552人にまで増加し、この3週間ほどで死者数が620人増加したことになります。西アフリカにおけるエボラ出血熱の感染拡大は、昨年12月から始まりましたが、今月になって感染ペースが加速しております。そしてWHOは、「感染の激しい地域では、感染者数は現在報告されている数字の4倍に達している可能性がある」との見解を示しております。現地では、医師・ゴム手袋・ワクチンが不足しているために、感染拡大が止められない状態が続いております。

ゴム手袋が天然ゴムから生成されることから、エボラ出血熱の感染拡大により、天然ゴム需要の拡大も予想されます。前回、マレーシアのゴム手袋業界が特需に沸いたのは、WHOが2009年4月に鳥インフルエンザの緊急事態を宣言した時であり、その時は、天然ゴム価格も上昇傾向を続けました。今回のWHOの感染見通しを見る限り、以前の鳥インフルエンザのときを上回るゴム手袋業界の特需が起こる可能性があります。過去には、エイズが世界的に騒がれ始めた時にコンドーム業界の特需が起こり、日本のコンドームメーカーである岡本理研ゴムの株価が高騰するとともに、天然ゴムが上昇を続けた事を記憶している方も多いのではないでしょうか。エボラ出血熱の感染拡大は、アフリカ西部のギニア、リベリア、ナイジェリア、シエラレオネに集中しているものの、それ以外の複数のアフリカ諸国で感染が報告されております。

供給過剰を背景に下落を続けている産地現物価格ですが、記録的な価格にまで下落したことで、生産高見通しがここに来て大きく変化し始めております。国際ゴム研究会(IRSG)は今月13日、今年の天然ゴムの世界需給が、5月発表時での71万4000トンの供給過剰予想から37万1000トンの供給過剰予想へと、大幅に下方修正して発表しました。たった3ヶ月間でここまで生産高見通しが下方修正された原因は、5月ごろからの安値が原因とされております。IRSGは、来年度分の供給過剰予想を、今年より46%減少して20万2000トンと発表しました。世界の天然ゴム生産高が2012年時点で1138万トンですから、15年度に対して20万トン程度の供給過剰予想なら、需給がほぼ均等しているとみるべきでしょう。産地現物価格が今後も現在の低価格を続けることになれば、生産高見通しがさらに下方修正されて供給不足に転じる可能性もあります。それにエボラ出血熱の感染拡大に伴うゴム手袋の需要増加が加われば、ゴム価格が急騰する可能性もあります。それだけに、今後の東京ゴムは注目ではないでしょうか。