米中西部では、これから収穫期を迎えることから、シカゴコーン市場がこれから需給相場本番を迎えることになります。8月12日の米農務省による需給報告では、過去最大の供給量見通しとなりました。しかし、その発表後からシカゴコーンが緩やかな上昇に転じていることが注目ではないでしょうか。現在のシカゴコーンは、4年ぶりとされる安値水準にあり、2011~2013年の高値水準の半値水準にまで下落しました。世界的には、トウモロコシの大半が飼料用として使用されます。しかし、最近の牧草価格が記録的な高値となり、生牛価格の高騰も目立っております。記録的な高値の生牛価格により酪農家の生産意欲が高まっているものの、高騰を続けている牧草価格が障害となり、これを解決するには、飼料に対するトウモロコシの配合割合を増加させることが必要となりそうです。

アルファルファ(牧草)の全米平均価格は、今年1月のトン=185ドルから、5月にトン=224ドルにまで上昇して過去最高値を記録しました。この原因は、作付け面積の減少に、干ばつによる生産減少が重なったことが原因とされております。2011~2013年の穀物価格が高騰を続けたことにより、牧草栽培から収益の高い穀物栽培への転換が全米各地で相次ぎました。また、干ばつに襲われたカリフォルニア州などでは、牧草の生産が前年の2割減となり、質の高いアルファルファがトン=370ドルを突破する高値も飛び出しました。シカゴコーンが2009~2010年の安値水準付近まで下落している反面、アルファルファの全米平均価格は、2009~2010年当時の2倍ほどの水準にまで上昇しております。今年のアルファルファ価格は、春先ごろから価格上昇が目立っております。そうした牧草価格の高騰を反映し、シカゴ生牛先物市場は、5月ごろの1ポンド=135~140セントから、8月になると160セント付近まで上昇。昨年5~9月が120セント付近で小動きを続けていたことから、1年間で33%ほど上昇し、4年間で2倍にまで上昇しました。現在は、アルファルファ218ドル&シカゴ生牛150セント付近で推移しておりますが、2008~2009年当時が、アルファルファ100ドル&シカゴ生牛70~80セント付近で推移していた事から、牧草価格の上昇がそのまま生牛価格の上昇に直結しているようです。

記録的な高値水準にある牧草価格と生牛価格、それに対して4年ぶりの水準まで下落したトウモロコシ価格ですから、酪農家のこれからの選択肢は、飼料に対するトウモロコシの配合割合を増加させることとなりそうです。春先からのシカゴコーン市場は、天候と育成状況が注目される天候相場の期間であったことから、あまり需要面が注目されることもなかったようです。しかし、先月の米農務省による需給報告後から、ようやく需給相場に注目する投資家も増えてきたように感じられます。天候相場の考え方と需給相場の考え方は、季節によって使い分ける必要があります。商品相場の基本的サイクルとして、高値になれば、生産者の生産意欲が高まるとともに需要が後退することで価格下落を促し、安値になれば、生産者の生産意欲が低下するとともに需要が増加して価格上昇を促すという特性があります。これからのシカゴコーン市場は、需給相場を想定した考え方が必要となり、トウモロコシの需要拡大に注目することも一考ではないでしょうか。