シンガポールゴムのRSS3号は、2011年3月に600セントを突破したものの、3年半に及ぶ長期下落トレンドにより、今では179セント付近まで下落しました。タイの現物価格(RSS3号)もキロ=55バーツ付近まで下落しており、生産コストを大きく割り込んでいることから、生産者の苦悩が伺えます。タイのゴム農家をまとめているタイゴム協会の昨日のコメントでは、ゴム研究所によると、現在の生産コストがキロ=64.14バーツと記載されております。64.14バーツを円換算すると、キロ=209円70銭となります。これに、輸入諸経費としてキロ=9円を加えると、218円70銭となります。現在の東京ゴムの当月限が186円付近で推移していることから、生産コストから計算した輸入採算価格を東京ゴム当月限が32円60銭も割り込んでいる計算になります。また、上海ゴムの当月限が1万2380元付近で推移しており、これをキロ当たりの円換算をして、中国特有の高率関税分を差し引くと、キロ当たり192円換算となることから、当月限同士を比べると、上海ゴムより東京ゴムが6円ほど割安換算となります。

天然ゴムの主生産地となるタイでは、昨年9月から大規模な反政府デモが発生して無政府状態となり、今年5月に軍事クーデターが発生して軍部が暫定政権を発足し、長らく無政府状態が続いておりました。しかし、先月下旬に新首相が任命され、先週末に閣僚32名が発表されました。その新政権が本日2日に宣誓式を行い、新政権体制がスタートすることになります。閣僚32名中11名が軍部出身者となるものの、無政府状態が1年ほど続いていただけに、新政権に対する期待も大きいようです。天然ゴム価格がコスト水準を大きく割り込んでいることから、生産者に対する対策を新政権がどのように行うのかが注目されております。

上海ゴムの前回までの取引中心限月をであった9月限が今月15日に納会を迎えます。これにより期近限月の内部要因が大きく変化しそうです。上海ゴムの取引中心限月は、4ヶ月に1度のサイクルで移動します。それにより取引中心限月が1月限→5月限→9月限→1月限へと移動するのです。また、取引中心限月に売買の8~9割が集中することから、限月ごとに偏った内部要因となることもあります。上海ゴムの当月限と3月限との価格差が2300元ほどですから、これをキロ当たりの円換算にすると、39円となります。当月限と、半年先の限月との価格差が39円ですから、異常なほど価格差が拡大している模様。東京ゴムの当月限と先限との価格差が12円程度ですから、上海ゴムの異常なほど拡大した順サヤは、前回の取引中心限月であった9月限が、「高値取り組みのトガメ」という内部要因の悪化で、必要以上に下げ過ぎたのではないでしょうか。そうした意味でも、今月15日の上海ゴムの納会を迎えると、上海ゴム期近限月の内部要因がアク抜けする可能性もあります。上海ゴムの異常なほど拡大した順サヤ、上海ゴムの納会が迫ってきたこと、タイの新政権体制が本日から始まったこと、生産コストを大幅に割り込む産地現物価格などを考えると、今後の東京ゴムが上昇基調に転じる可能性に注目することも一考ではないでしょうか。


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