昨日夕方のロシアとウクライナとの電話による首脳会談により、「停戦合意」が伝えられると、NY金の電子取引が30分間で7ドルほど下落したものの、その3時間後には、安値から10ドルほど上昇しました。結局、NY金の電子取引は、昨日夕方の停戦合意が伝えられる直前の水準より上昇しております。素直に考えれば、「停戦合意=地政学的リスクの低下=金相場の下落」と考えられるものの、金相場を取り巻く複雑な環境が、金相場を難しくしているようです。一方、オバマ米大統領は昨日、バルト3国防衛に対してNATOの支援を確約し、ロシアの侵略姿勢に対する結束を呼びかけていることから、ロシアとNATOとの対立の構図に金相場が少し反応したのかもしれません。

 昨日夕方に停戦合意が伝えられると、NY金が瞬間的に下落する場面もありましたが、「停戦合意によるユーロ買い」が進み、対ユーロでのドル安が、ドルの代替銘柄としての金買いにつながったのかもしれません。しかし、ユーロドルも昨日夕方に一時的な上昇を見せたものの、現在は、昨日昼ごろより安い水準まで下落しております。このことから、「停戦合意=ユーロ買い」という素直な反応ではないようです。4日にECB理事会、5日に米雇用統計が控えていることから、ユーロやドルに対する不透明感も高まっているように思われます。

先月26日のジャクソンホールでのイエレンFRB議長演説により、米国の早期利上げ懸念が浮上し、ドル買いが加速しました。それと同時に同ジャクソンホールでのドラギECB総裁演説により、ユーロ圏の追加緩和策観測が浮上してユーロ売りを加速させました。そうした先月下旬ごろからの背景を考えれば、本日のECB理事会での追加緩和策に対する姿勢、明日の米雇用統計で市場予想通りに雇用改善となるのかなどへの注目が高まっているようです。そうしたことから、ECB理事会や米雇用統計により、ユーロとドルの値動きが急変する可能性もあるだけに、「ドルの代替銘柄としての金投資」という側面から、金相場の動向がこの2日間で急変する可能性もあります。それに加えて、今日と明日のNATO首脳会談で、ウクライナ情勢に対してどのような決断を下すかも、金相場に影響を及ぼす可能性があります。このように週末にかけてビッグイベントが目白押しとなっており、金相場を取り巻く環境をより複雑にしているようです。