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参考にどうぞ

4月15日

原油市場パート2「減少を続けるシェールオイル生産を見据えて」

米原油生産は、4月3日時点で日量940万4000バレルに達しており、増加を続けております。しかし、米エネルギー情報局が13日発表したレポートでは、米国シェールオイル開発の主要7地区における5月の石油生産が前月より日量5万7000万バレル減少するとの見方を発表しました。このシェールオイル主要7地区の5月の石油生産見通しは日量556.1万バレルとなり、全米原油生産の約59%を占めております。ここに来てようやく米国の原油生産が減少に転じるとの見方が強まってきました。

全米オイルリグ数は、2009年6月5日時点の179基から2014年10月10日時点の1609基まで増加しました。しかし、その後の原油暴落によりオイルリグ数が激減し、4月10日時点で760基まで減少しました。全米オイルリグ数が6ヶ月間で53%ほど減少したものの、それでも全米原油生産が増加を続けたことに疑問を持つ投資家も多いのではないでしょうか。その理由は2つほど考えられます。1つ目は、生産量が少なく生産コストの高いシェール油田を停止させて、生産量が多くコストの安いシェール油田に人員増加と設備投資を進めたことです。2つ目は、新規掘削されたシェール油井が徐々に生産を開始するため、オイルリグ数の増加とシェールオイル生産量の増加に少しタイムラグが生じることです。

シェール油田の原油生産量は、油田採掘開始から1年経つと、当初の3分の2ほどに低下し、3年後には掘削開始時のわずか5~20%しか産出できません。一方、従来型油田であるサウジアラビアのガワール油田は、20世紀半ばに創業を開始し、いまだに同国石油生産の半分ほどを占めております。従来型油田は、地下深くに液体で埋蔵されていることから、オイルリグを打ち込むと、原油が地下の圧力により自動的に噴出することから、自噴油田とも呼ばれます。しかし、シェール油田は、オイルリグを打ち込み、更に高圧の水を噴射することで、その周囲の岩石中に染み込んでいる油分が抽出されます。そしてシェール油田では、縦型のオイルリグを打ち込んでも、その周囲の油分がすぐに枯渇することから、地下深くで横方向にオイルリグを伸ばして生産を続ける必要があります。横方向に伸ばしたオイルリグからの生産にも限界がある事から、おのずとシェールオイル油田の寿命が短くなり、産油量も減少を続けることになります。シェール油田の寿命がかなり短いことから、全米オイルリグ数が今後減少しなくても、時間経過と共にシェールオイル生産量が減少を続けることになります。しかし、米国のシェールオイル生産は、米国原油生産の半分ほどを占めていることから、このままでは、深刻な供給不足に陥る可能性もあります。その解決方法は、新たなシェール油田の開発可能な水準まで原油価格が上昇することです。新たなシェール油田を開発するためには、「シェールオイルの井戸元価格で55ドル以上」が必要とされております。シェールオイルは、精製してもガソリン成分があまり抽出できず、不純物も多いことからWTI原油とシェールオイルの井戸元価格では、15ドルほどの価格差があります。時間経過と共にシェール油田の生産量が減少を続けることから、将来的に新たなシェール油田の開発を可能とするためにWTI原油が70ドル以上まで上昇すると考えるべきではないでしょうか。単純に計算しても、米国のシェールオイル生産量が日量500万バレル程度と仮定し、1年間で生産量が3分の2にまで減少すると、「日量500万バレル÷3×2=約日量333万バレル」となり、1年間で約166万バレルも減少する計算です。米国の原油生産が日量166万バレルも減少すると、世界の原油需給が供給不足に転じる計算となります。「新たなシェール油田の開発のために、WTI原油で70ドル以上が必要」という考え方に対し、米エネルギー情報局(EIA)も同じ考え方をしているように感じられます。

米エネルギー情報局(EIA)によるNY原油の価格見通し

 

         2015年

        2016年

   通年

 

1Q

1~3月

2Q

4~6月

3Q

7~9月

4Q

10~12月

1Q

1~3月

2Q

4~6月

3Q

7~9月

4Q

10~12月

2015年

2016年

3月短観

47.93

47.00

53.00

60.67

67.00

71.00

71.64

70.33

52.16

70.00

4月短観

48.59

47.67

53.00

60.67

67.00

71.00

71.67

70.33

52.48

70.00

 上記は、今月発表された米エネルギー情報局(EIA)によるNY原油の価格見通しです。EIAは、1年後のNY原油価格見通しを71.00ドルとしております。これは、時間経過と共にシェールオイル生産が減少を続けることから、近いうちに新たなシェール油田の開発を可能とするためにWTI原油が70ドル以上まで上昇する必要があると考えているのではないでしょうか。この短期見通しでは、2015年4~6月から2016年4~6月にかけてNY原油が23ドル33セントの上昇を見込んでいるようです。この短期見通しのように2016年4~6月にNY原油が71ドルまで上昇すれば、現在のNY原油(52.3ドル付近で推移)が約35.7%上昇する計算です。現在の東京バージガソリン(5万8900円付近で推移)も2016年4~6月に向けて35.7%上昇するのであれば、7万9900円付近まで2万1000円ほど上昇する計算(5万8900円×1.357=約7万9900円)となります。こうした米エネルギー情報局の短期見通しを参照し、東京バージガソリンに対して1年ほどのスパンでの強気見通しも一考ではないでしょうか。

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