今週29日にメール会員の皆様に発行した「週間レポート」の一部を紹介します。

ゴム市場の総括

 上海総合株価指数が6月12日から7月8日にかけて35%ほど急落したことを受けて、原油や貴金属、天然ゴム、農産物、非鉄金属など広範囲な中国関連銘柄が急落することになりました。また、日本株や米国株なども大幅下落し、さながら「チャイナ・ショック」というところでしょうか。特に7月24日に発表された財新中国製造業PMI(旧名:HSBC中国製造業PMI)や、27日に発表された中国工業利益(6月)が予想以上に悪化したことを受けて中国株が下げ足を早め、中国関連銘柄の下げ足も早まりました。中国の天然ゴム輸入量が世界全体の輸入量の35%を占めていることから、天然ゴム市場の下げ足も早まりました。

 一連の中国株急落に伴う中国関連銘柄の急落を受けて、産地天然ゴム価格が6年ぶりの安値水準に迫ってきた事から、そろそろ限界的な水準に達したとの見方も必要となりそうです。シンガポールゴムRSS3号は、昨年10月2日に148.3セントまで下落して6年ぶりの安値となりました。それを受けてインドネシア政府が同日2日に提案した「キロ=150セントの最低販売価格設定案」に対して賛同する動きが広がりを見せ、4大生産国のタイ、インドネシア、ベトナム、マレーシアで「キロ=150セントの最低販売価格設定案」を支持する動きが広がりました。そして同月6日にタイの農業・協同組合担当大臣とマレーシアのプランテーション産業担当大臣との会談が行われ、インドネシアが提案した「キロ=150セントの最低販売価格設定案」に対してタイとマレーシアの両大臣が支持を表明した経緯があります。そして、7月28日のシンガポールゴムRSS3号が156.5セントまで下落したことから、昨年10月にインドネシア政府が提案し、4大生産国のタイ、インドネシア、ベトナム、マレーシアが支持した「キロ=150セントの最低販売価格設定案」が注目される水準に迫ってきました。産地がキロ=150セント以下での販売を拒むことが予想されます。150セントを円換算すると、150セント×123.5円=約185.2円となります。輸入諸経費をキロあたり8円で計算すると、産地価格150セントの輸入採算価格が193.2円換算となります。それに対して東京ゴムの28日の日中取引の終値が191.6円ですから、「東京ゴム価格が限界的な水準まで下落した。」と考えるべきかもしれません。また、タイ・ハジャイのRSS3号現物が本日で49.79バーツまで下落し、タイ・スラスタのRSS3号現物も49.8バーツまで下落したことから、産地の安値非売運動を警戒する必要もあります。

 産地価格が6年ぶりの安値に迫っているものの、国内価格には産地価格ほどの割安感はありません。その原因は円安によるものです。第2次安倍政権が掲げた「アベノミクス」という政策により、ドル円が1ドル=80円付近から現在の123.5円付近まで大幅に円安が進みました。現在の東京ゴム先限(28日終値)が202.6円であり、ドル円が1ドル=123.5円です。ドル円が仮に「アベノミクス前」の1ドル=80円付近であれば、現在の東京ゴムは、202.6円÷123.5円(現在のドル円)×80円(3年前のドル円)=約131円換算となります。東京ゴムがキロ=131円なら割高感を感じる投資家もいないことでしょう。こうした計算をすると、産地価格がどれほどの安値に苦しんでいるかが伺えます。

国際天然ゴム公社(IRCO)が昨年2月に会合を開き、タイ、インドネシア、マレーシアに対して「安値で天然ゴムを売らないように」と呼び掛けました。それを受けたタイ天然ゴム協会の理事長は、「東南アジアの生産者の平均コストはRSSで1キロ=約60バーツになる。それにより、輸出業者はキロ=62.70バーツ以下、または、キロ=190セント以下で天然ゴムを販売してはならない。」と、同国の天然ゴム関係者に呼び掛けた経緯があります。昨年2月時点でのコストラインが「キロ=62.70バーツ&キロ=190セント」でしたが、7月28日時点で、「タイのRSS3号現物が49.79~49.8バーツ&シンガポールゴムが156.5セント」ですから、生産コストを大幅に割り込んでいる水準です。国際天然ゴム生産国連合(ANRPC)は、2015年前半のANRPC加盟国の天然ゴム生産が504万1000トンとなり、前年同期(507万6000トン)から6.9%低下したことを発表しました。ANRPCは、世界の天然ゴム生産の主要9カ国で構成されております。ANRPCは、生産高減少の要因を、「低価格による生産意欲の衰退」と指摘しており、現在の価格水準では今年後半も生産削減が更に進むことが予想されます。そして、「低迷する天然ゴム価格」により今年前半でここまで大幅に生産量を減少させていることから、需給関係がかなり逼迫してきたことも注目です。そしてタイの南部から北部にかけて過去30年間で最悪とされる干ばつ被害が発生していることも注目でしょう。そして、天然ゴム生産世界第3位のベトナムで記録的な干ばつとなり、世界生産第5位のインドで記録的な熱波被害が発生したことから、そうした異常気象が今年後半の天然ゴム生産量を更に減少させると考えるべきかもしれません。「行き過ぎも相場」という相場格言もありますが、生産コストや産地での安値非売運動、今年前半の生産高、東南アジアでの異常気象などを考えれば、「東京ゴムは、限界的な安値にまで到達した」と考えるべきかもしれません。




 無料メール情報会員の申し込みはココをクリックして申し込んでください。
無料メール情報会員の申し込み