トルコは、7月24日よりイラクやシリアのイスラム国(IS)とクルド人組織(クルディスタン労働者党)の拠点への空爆を開始しました。この、「二正面作戦」による空爆では、そのほとんどが「クルド人組織(クルディスタン労働者党)」の拠点への空爆となっており、エルドアン大統領率いる与党・公正発展党の解散総選挙への行動との意見も多く聞かれるようになってきました。解散総選挙により与党・公正発展党が再び単独与党に返り咲き、エルドアン大統領の目指す「実権型大統領制」が実現すれば、エルドアン独裁政権を嫌気してトルコリラが再び売られ続ける可能性もあります。

先月のトルコ総選挙では、エルドアン大統領率いる与党・公正発展党は、クルド人組織(クルディスタン労働者党)とつながりのあるクルド政党の人民民主主義党に躍進を許し、過半数を割る結果となりました。それにより連立政権を余儀なくされ、エルドアン大統領が目指していた「実権型大統領制」も頓挫し、報道の自由や汚職摘発などに対して譲歩する必要性もでてきました。エルドアン大統領が所属する公正発展党の規則では、首相の4選を禁止していることから、3選目を向かえたエルドアン首相がトルコ初の直接選挙で昨年秋に大統領となった経緯があります。トルコでは、大統領より首相の方がより政治的発言権が大きいとされております。その為、エルドアン大統領は、首相より大統領のほうがより政治的発言権が大きくなる「実権型大統領制」への憲法改正を目指しておりました。しかし、先月の総選挙で過半数を割る結果となり、「憲法改正による実権型大統領制の実現」の計画が頓挫しました。しかし、エルドアン大統領率いる与党・公正発展党は、先月の総選挙から得票率が2%以上増加すれば、解散総選挙を実施して得票率が過半数を上回り、再び単独与党に返り咲くことも可能となります。先月の総選挙で与党・公正発展党が過半数割れとなった主な原因は、それまで与党・公正発展党を支持し続けてきたクルド人の多くがクルド労働者党に鞍替えし、クルド労働者党の得票率が13%に達する大躍進を遂げたことです。今回、トルコ軍がISよりクルド人組織(クルディスタン労働者党)の拠点を中心として空爆していることも、先月の総選挙の結果が影響していると見られております。

 7月20日にトルコのシュリュジュで起きた爆弾テロを実行したのはISとみられ、32人が死亡しました。それをきっかけにトルコ内でテロに対するデモが拡大し、トルコ政府もISへの攻撃参加を余儀なくされた経緯があります。トルコ内でクルド人組織によるテロも発生していたことから、トルコ政府が「テロ撲滅」を目指して、ISとクルド人組織(クルディスタン労働者党)の拠点への空爆を7月24日から開始しました。しかし、その空爆のほとんどがクルド人組織(クルディスタン労働者党)の拠点に実施されております。それにより、トルコ国内で、「テロ撲滅=クルド人組織はトルコの敵」という刷り込みがトルコ国民に促されると、先月の総選挙から得票率が2%以上与党・公正発展党に動き、解散総選挙が実施される可能性も高まります。最近のトルコ内でのテロの多くがISによるものとされておりますが、トルコ政府は、24日から実施した空爆のほとんどをISではなくクルド人組織(クルディスタン労働者党)の拠点に集中しております。こうした動きを感じ取ってUSドル・トルコリラは、7月30日に引け値ベースで過去最高値を記録したようです。7月7日の総選挙後から下落基調にあったUSドル・トルコリラは、7月20日のトルコ・シュリュジュで起きた爆弾テロを境に上昇基調に転じました。シュリュジュでの爆弾テロをきっかけにトルコ内でテロに対するデモが拡大し、ISがトルコ国境付近まで勢力を拡大させていたこともあり、「トルコとISの戦闘は避けられない。」という思惑がトルコリラ売りの要因となりました。有志連合によるISへの戦闘も1年が経過し、そうした「泥沼の戦い」にトルコが加わったことも、今後のトルコリラ売り要因となりそうです。そして、トルコの解散総選挙の可能性が高まったこともトルコリラ売り要因となりそうです。これで、総選挙を経てエルドアン大統領が目指す「実権型大統領制」が実現すれば、「エルドアン独裁政権の復活」を嫌気してトルコリラ売りが更に進む可能性もあります。昨日のUSドル・トルコリラが終わり値ベースで最高値を更新しており、「記録破れば高峠」という相場格言もあるように、「新たな展開に突入」と考える必要もありそうです。トルコリラは、とてもスワップ金利が高い通貨ですが、最近のトルコを取り巻く環境を考えると、「トルコリラ売り」も一考かもしれません