南アフリカランドや豪ドル、トルコリラ、メキシコペソ、NZドル、人民元などの新興国通貨や資源国通貨が8月12日頃から主要通貨に対して急落をはじめ、それらの通貨が対円で8月24日に年初来安値を記録しました。そうした新興国通貨や資源国通貨を急落させた要因は、中国人民銀行が8月11日から3日連続で実施した人民元の切り下げとされております。

財新とマークイットが8月3日に発表した7月の財新中国製造業PMI(旧名:HSBC中国製造業PMI)改定値が前月値より0.4ポイント低下の47.8ポイントとなり、景気分岐点とされる50ポイントを5カ月連続で下回りました。そして、8月8日に発表された中国の貿易収支で、7月の輸出額が前年同月を8.3%下回り、輸入額も8.1%下回ったことを受けて中国経済成長の鈍化に対する警戒が一気に高まりました。それを受けて中国人民銀行が人民元の輸出競争力を高めるために3日連続で人民元の切り下げに動きました。通常であれば通貨切り下げによる経済刺激策は好感されます。しかし、製造業PMIが景気分岐点とされる水準を5ヶ月連続で下回り、輸出額や輸入額が大方の予想に反して大幅に悪化した矢先に、「人民元の3日連続での切り下げ」を受けて、「そこまで中国経済成長の鈍化が深刻なのか。」というイメージを投資家に与えることになりました。そして、上海総合株価指数が8月24日に9.5%安、25日に7.6%安となり、4営業日で22%も下落し、中国株の暴落が世界の株価を暴落させ、「中国発世界同時株安」と騒がれました。それにより新興国や資源国の通貨や株式も大きく売られることになりました。

多くの新興国通貨や資源国通貨は、8月24日に主要通貨に対して年初来安値を記録しました。その後、少し上昇に転じたものの、9月1日頃から下落に転じ、9月7日頃に再び多くの新興国通貨や資源国通貨が主要通貨に対して年初来安値を更新しました。投資家心理に敏感に反応するとされる日本円は、「リスクヘッジの円買い」により8月24日に1ドル=116.13円を記録しました。その後、8月31日に121.62円まで上昇しましたが、9月4日に118.58円まで下落しました。しかし、今週明けから3日連続でじりじりと円安に進んでおります。

昨夜の米国市場で中国株ETFが過去2ヶ月間で最大の上昇となったことを受けて、チャイナ・ショックが沈静化し始めたように感じられます。中国本土株に連動する米最大の上場投資信託(ETF)が昨夜の米国市場で急騰したことにより、新興国や資源国の通貨や株式に対して「反撃ののろしが上がった」と受け止められるのかもしれません。添付しているドル・円や、新興国通貨となるトルコリラ・円、資源国通貨となる豪ドル・円の日足を見比べると、同じような値動きとなっていることに気付かれることでしょう。先月からの新興国通貨や資源国通貨がいかに投資家心理に左右される値動きを続けてきたかが伺えます。そうした投資家の恐怖心を表す指数とされるシカゴVIX指数(通称:恐怖指数)は、8月24日のNYダウが寄り付き後数分間で1089ドル安まで下落した時に、1日の下げ幅として過去最大を記録しました。そうしたフラッシュ・クラッシュ(瞬間暴落)を起こした米国市場の24日朝には、30分間ほど恐怖指数が「計算不能」に陥るほどのパニック的な状態となりました。そしてフラッシュ・クラッシュ直後の「計算不能」が解消された時の恐怖指数が「前日比82%上昇の51ポイント」を記録しました。

恐怖指数の過去の高値は下記の通りです。

1997年10月 アジア通貨危機   38.20 ポイント

1998年8月 ロシア通貨危機     45.74ポイント

2001年9月 アメリカ同時多発テロ 43.74 ポイント

2002年7月 エンロン不正会計事件 45.08 ポイント

2003年3月 アメリカのイラク侵攻 34.69 ポイント

2008年10月 リーマン・ショック  89.51ポイント

恐怖指数が8月24日の米国市場で51ポイントを記録したことから、ダントツで過去最高となるリーマン・ショックの89.51ポイントを例外と考えれば、8月24日の51ポイントが過去最高となります。そして現在の恐怖指数が24ポイント付近まで低下してきたことから、「チャイナ・ショックがかなり沈静化した。」と考える必要もありそうです。こうした恐怖指数の大幅低下を受けて、これまで中国経済成長の鈍化懸念で売られ続けてきた銘柄に注目するところに来ているのかもしれません。

 


ドル・円の日足
ドル・円の日足

トルコリラ・円の日足
トルコリラ・円の日足

豪ドル・円の日足
濠ドル・円の日足
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