28日の欧米市場では、スイスの資源メジャーであるグレンコア社の株価暴落により、資源国通貨や資源銘柄への売りが加速しました。このことは、これから始まる7~9月期決算発表を占う上で重要なヒントとなりそうです。

グレンコア社の株価は、過剰な債務により資源安を乗り切れなくなるとの懸念から28日に29%安と大暴落しました。しかし、翌29日に同社から「営業面も財務面も引き続き堅調だ。キャッシュフローはプラスで流動性も十分であり、支払い能力に全く問題はない。」との内容の資料が提出され、同社の株価が17%高となりました。同社の株価は、年初来で80%近くも下落しております。同社は、純負債額の約300億ドルに対して、100億ドルの債務削減計画を今月に発表しました。また、過去1カ月間に新株発行を通じて25億ドルを調達し、今年と来年の配当支払いを削ることで24億ドルを節約したとされております。今月になり同社は、南アフリカのコンゴとザンビアにおける銅生産の約25%を停止させることを発表し、南アフリカのエラン・プラチナ鉱山の閉鎖を検討していることも明らかにしましました。近年の資源価格の大幅下落により、グレンコア社の経営が大幅に悪化しており、その対応に追われているようです。資源メジャーの一角であるグレンコア社の今回の騒動は、他の資源メジャーも「他人事」とはいえないようです。問題は、10月中旬から本格化する資源メジャーの7~9月期決算発表と、新年度営業計画の行方でしょう。これから決算発表が本格化することで、資源メジャーの多くから、赤字決算とそれに対する対応策の発表が予想されます。そうしたことに対し、「エネルギー企業における1~3月期決算発表と営業計画」が大きなヒントとなりそうです。

 昨年10月頃から原油価格が暴落し、NY原油価格が1~3月期に40ドル前半まで下落しました。それを受けて1~3月期のエネルギー関連企業の決算発表が大幅に悪化し、人員や設備投資、生産量などの大幅削減計画が多く発表されました。その当時のニュースの一部を下記に掲載しております。

油田開大手のベーカーヒューズ社は、1~3月期決算で赤字に転落したことが報告され、それにより4~6月期にオイルリグ数を30%削減する方針を表明しました。世界最大の油田サービス会社である米シュルンベルジュの1~3月期決算では、純利益が前年同期より40%ほど減少し、1万1000人の人員削減計画が発表されました。中国国有石油大手の中国石油化工業は、業績悪化を理由にグループ全体の110万人の正規従業員に対して、今後5年間で40万人にまで削減する計画を発表しました。米国のベーカーヒューズ社などの米油田開発会社は、2014年1月時点で61社あったものの、今年4月時点で41社にまで減少しました。 

エネルギー関連企業による1~3月期決算がかなり悪い内容となり、人員や設備投資などの削減計画の発表が多く発表され、それと同時に40ドル前半まで下落していたNY原油が60ドル付近まで急上昇した経緯もあります。

 NY銅は、5月から8月にかけて30%ほど下落しており、非鉄金属銘柄の多くが5月から大幅下落しました。それにより多くの資源国通貨や資源関連会社株への売りも加速しました。資源関連会社の7~9月期決算では、人員や設備投資の大幅削減発表が行われ、それを引き金にして資源国通貨や資源関連会社の株価、資源価格などが本格上昇に転じる可能性もあるだけに、資源価格や資源国通貨が上昇に転じる可能性に注目ではないでしょうか。

資源メジャーの7~9月期決算の悪化が予想される反面、「資源価格安&原油安」の恩恵を受けて製造業の多くの企業の7~9月期下決算が良好な内容となる可能性もあります。

米S&P採用企業の主な決算発表スケジュールは、下記の通りです。

10月

8日アルコア。

9日CSXなど6社。

13日ファナスル、インテル、JPモルガンチェースなど5社。

14日バンク・オブ・アメリカ、イーベイなど4社。

15日シティーグループ、ゴールドマン・サックス・グループ、キーコープ、チャールズ・シュワブなど16社。

16日ベーカーヒューズ、バンク・オブ・NYメロン、GE,グーグル、マテル、モルガン・スタンレーなど22社。

19日ハリバートン、IBMなど5社。

20日アップルなど12社。

21日ボーイング、コカコーラ、モトローラなど23社。

22日キャタピラー、マクドナルド、スリーエム、マイクロソフトなど32社。

23日アマゾンドットコムなど35社。

24日コーチ、デュポン、フォードモーターなど26社。

28日フェイスブックなど36社。

29日マスターカードなど55社。

30日エクソンモービルなど42社。

今回の7~9月期決算を占う上でも、前半戦となる10~16日の決算発表である程度の傾向もつかめることから、そのあたりで米国経済の堅調さを再確認することになり、マーケット全体がリスクオンの流れに転じる可能性もあります。