昨夜のNY原油は、EIA週間石油在庫統計の発表を受けて31.2ドル付近から32.8ドル付近まで上昇したものの、その後は少し軟化し、現在の電子取引は32ドル付近で推移。FOMCによる政策金利発表を受けてNYダウが1時間半で350ドルほど急落したものの、その間にNY原油がほとんど下落しなかったことは注目であり、そうした値動きに地合いの強さを感じました。

 EIA週間石油在庫統計は、原油840万バレル増、ガソリン350万バレル増、ディスティレート410万バレル減、クッシング原油77万バレル減となりました。製油所稼働率は1.9%低下の87.4%、全米原油生産は1.4万バレル減の日量922.1万バレルです。昨夜のNY原油は、原油在庫が市場予想平均の2倍ほどの大幅増加となったものの、クッシング原油在庫が12週間ぶりに減少に転じたことを好感して上昇に転じた模様。製油所稼働率が大幅に低下したことにより、原油在庫が大幅増加となりました。

 NY原油の受け渡し指定倉庫がオハイオ州クッシング原油倉庫に限定されていることから、クッシング原油在庫の変化がNY原油価格に大きな影響を与えます。米国の主要原油倉庫は、テキサス周辺のメキシコ湾岸に集中しております。内陸部のオハイオ州クッシング原油倉庫からメキシコ湾岸に通じるパイプラインの輸送能力の関係でクッシング原油在庫が大きく変化します。EIAの推定値では、クッシング原油在庫の貯蔵能力は7080万バレルとされております。現在のクッシング原油在庫は6342万バレルであり、前週まで12週間連続で増加を続け、12週間で1107万バレルの増加となりました。それにより、このままのペースでクッシング原油在庫が増加を続けると、あと8週間ほどで貯蔵能力の限界に達するとの見方もこれまでの原油価格の圧迫要因でした。

 今回のEIA週間石油在庫統計では、クッシング原油在庫が12週間ぶりに減少に転じたことや、ディスティレート在庫が3週連続で減少したことが好感されました。昨年11~12月の暖冬の影響で暖房用燃料需要が大幅に低下し、昨年11~12月のディスティレート在庫が増加を続け、それも原油価格の圧迫要因となっておりました。しかし、昨年末頃から米国の気温が急低下し、その後も何度か寒波が到来しており、暖房用燃料需要が増加傾向に転じたことで、ディスティレート在庫が3週連続で減少したようです。今回のEIA週間石油在庫統計では、原油在庫の大幅増加に驚かされましたが、製油所稼働率が87.4まで大幅に低下していることを考えると、仕方がないことでしょう。過去1年間での製油所稼働率は、最高が96.1%、最低が85.5%ですから、現在の製油所稼働率はこの時期としてはかなり低いようです。これから春のドライブシーズンに向けて製油所稼働率が上昇基調となりやすい時期を迎えます。


米原油在庫
全米原油生産と製油所稼働率
石油製品在庫