世界最大の天然ゴム生産国は、タイとインドネシアです。この2国の天然ゴム生産量が世界生産の約6割を占めます。そして、天然ゴムの約9割が自動車などのタイヤに加工されます。また、主生産国のタイやインドネシアでは、雨季や乾季、暑期などの季節的要因により、天然ゴムの生産量が変化します。

 天然ゴムの主生産地となるタイ南部の季節的要因

5月頃からの雨季入りでゴムの木の新芽が出てその成育が早まり、タッピング(樹液の採取)が開始されます。

7月~10月頃は、雨季により比較的安定した生産が行われます。

10月~12月頃は、雨季の中でも多雨季となります。雨季や多雨季にラニーニャ現象が発生すれば、洪水被害が拡大して天然ゴムの生産障害を招くこともあります。しかし、昨年春ごろからのエルニーニョ現象の発達により、タイやインドネシアで干ばつ被害が続いております。

1月~3月は、乾季となり、増産期となります。

4~6月は、暑期となり、減産期となります。この時期は、ゴムの木の古い葉が落ち、落葉期ともいわれます。また、新芽の準備のため樹液の出が悪くなることと、ゴムの木の保護という観点から、生産者はタッピング(樹液の採取)を一時的に休止することもあります。

 日本の天然ゴム輸入(2012年)の約40%がタイ、約57%がインドネシアです。ここにきてインドネシア政府による価格てこ入れ策が浮上しており、これが実施されると、輸入量の半分強をインドネシアに頼る日本にとっては、かなり大きな問題となります。

 昨年春ごろから発生しているエルニーニョ現象は、エルニーニョ監視海域の月平均海面水温の基準値との差が+3℃まで上昇し、昨年12月に勢力が最も強まりました。その後は、勢力が弱まっております。気象庁が3月10日に発表したエルニーニョ監視速報では、エルニーニョ監視海域の月平均海面水温の基準値との差が6月頃からマイナスに転じる見通しです。そして、10月頃には、エルニーニョ監視海域の月平均海面水温の基準値との差が-1℃を下回ってラニーニャ現象が発生する見通しです。天然ゴムの主生産地となるタイやインドネシアでは、エルニーニョ現象の発生で干ばつ被害が多発し、ラニーニャ現象の発生で洪水被害が多発する傾向もあります。タイ商工会議所大学(UTCC)は今月、「今年は干ばつの被害拡大によって1190億バーツもの経済損失が予想され、これがタイ経済成長率を0.85%ほど引き下げる可能性がある。そして、5~6月頃までエルニーニョ現象による干ばつ被害が続く恐れがある。」という見通しを発表しております。これから天然ゴムの減産期が始まることから、「干ばつ&減産期」のダブルパンチで天然ゴム生産量が例年を下回る可能性も高まっております。