昨夜のNYダウは、260ドル安の1万7140ドルで取引を終えました。S&P500種株価指数は1.8%安の2000.54ポイントで取引を終え、100日間と200日間移動平均線を両方割り込み、テクニカルが大幅に悪化しました。米国のFF金利による年内利上げ確率は、月初の76%から8%にまで低下しております。昨夜の米国市場では、S&P500種のセクター別10業種のうち8業種が下落。その一方で公益(電力・ガス・水道)部門は1.3%上昇して最高値を更新しました。S&P500種株価指数を構成する10業種のうち、今年になって新高値をつけたのは、景気に左右されにくいとされる公益部門と生活必需品部門の2業種だけなのですから、投資家の多くが安全志向なディフェンシブ銘柄(公益部門や生活必需品部門など)を選択しており、米国経済成長に対していかに不安視しているかが伺えます。米国株の下値不安が高まってきたものの、安全志向なディフェンシブ銘柄はすでに過去最高値付近まで上昇していることで、米国株式市場内での避難をより難しくしております。

米10年債は、最高値付近まで上昇し、利回りが最低値付近まで低下しております。それに対してドイツ銀行の米国担当チーフエコノミストは、「米経済成長の停滞とは関係があるが、英国のEU離脱とはあまり関係がない。景気は循環的に上向きの勢いを失った。景気拡大局面は8年に及んでおり、さまざまな指標がピークを示唆しているように見える。金利はゼロ近辺にあり、間違いを犯す余裕はない。金融政策は動きがとれない状態だ。」と述べております。欧米の多くの債券価格が最高値付近まで上昇して利回りが最低値付近まで低下しており、株式市場から債券市場への避難をより難しくしております。

 世界最大の投資銀行であるゴールドマン・サックスのマネージングディレクターは6月10日、「S&P500種株価指数が過去最高に近く、バリュエーションは割高で成長は欠如という状況において、下落リスクは高まっているもようだ。さらに悪いことに、世界の株式市場の連動性が高まっているために外国株に逃げづらくなっていることに加え、ディフェンシブ銘柄や一部の上場投資信託(ETF)が割高になっていること、債券利回りが過去最低付近で推移していることにより投資家はこうした下落に対するヘッジが難しくなっている。」と述べております。米国株のディフェンシブ銘柄や欧米の多くの債券価格が最高値付近まで上昇していることで、投資資金の多くが避難先を求めて今後も金市場に流入を続ける可能性があります。


NYダウの週足
NYダウの週足

米10年債の週足
米10年債の週足

NY金の週足
NY金の週足

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