トランプ米大統領が9日に、「これから2~3週間で税金という面では驚異的な何かを発表するつもりだ。」と述べたことを受けて、NYダウが9日から12営業日連続で最高値を更新し、30年ぶりの最高値更新記録となりました。しかし、本日のトランプ大統領の議会証言からは、サプライズもなく、「税金という面では驚異的な何か」についての発表もありませんでした。それにより、トランプ政権による政策は、予想以上に煮詰まっていない印象を受けました。これから2018年度予算教書の制作に向けて、歳入と歳出の細かな調整が山積みされております。

 米国の2017年予算教書では、歳入が3兆4770億ドル、歳出が4兆890億ドルとなり、6120億ドルの財政赤字でした。財政赤字自体は、2000年以降から毎年のことですから、それほど驚きません。

 歳入は、個人所得税1兆6460億ドル、法人税4730億ドル、社会保険等1兆1110億ドル、その他2930億ドルです。トランプ大統領は、中間層所得税と法人税を大幅に削減すると言っておりますが、歳入の60%が「個人所得税と法人税」ですから、ここの歳入を減らすと、その穴埋めは大変です。歳出に関しては、オバマケアを廃止すると言っているものの、インフラ投資の拡大や軍事費の拡大も目指しております。トランプ大統領のこれまでの39の公約を満たすには、相当な財政赤字の拡大を覚悟する必要もありそうです。

トランプ大統領は、本日の議会演説で、「歴史的な税制改革を進める」と宣言しましたが、多くの投資家が知りたかったのは、「税制改革の詳細」でしょう。個人所得税と法人税を大幅に減らすと、それだけ歳出が減少するのですから、減税による歳入減少は、歳出減少というデメリットも招きます。歳入減少と歳出拡大を両方満たす為には、財政赤字の拡大が必要となることから、これから始まる2018年度予算教書の製作には、米議会がかなり困窮することも予想されます。理想を述べるのは簡単でも、その理想を現実にすることの厳しさを、これからの米議会が受け止める必要もあるのかもしれません。これまでのマーケットが、トランプ政権による「理想」に対する期待先行であったとすると、これからのマーケットは、理想と現実の違いを実感することになるのかもしれません。
米財政赤字