NYダウの電子取引は、17時ごろから下げ足を速め、現在は80ドル安付近まで下落しております。それによりリスクオフの流れが強まり、NY原油の電子取引が53ドル台を割り込みました。NY金の電子取引は、少し上昇に転じました。ドル円は、今朝から113.8円付近で横ばいを続けていたものの、現在は、113.6円付近まで円高に進んでおります。

 トランプ米大統領が2月9日に、「これから2~3週間で税金という面では驚異的な何かを発表するつもりだ。」と述べたことを受けて、NYダウが2月9日から12営業日連続で最高値を更新し、30年ぶりの最高値更新記録となりました。しかし、トランプ大統領の議会証言からは、サプライズもなく、「税金という面では驚異的な何か」についての発表もありませんでした。今回のトランプ大統領による議会演説は、トランプ大統領のこれまでの39の公約を繰り返し述べたにすぎませんでした。

 ホワイトハウスのスパイサー報道官が、トランプ政権が議会に送る2018年度予算教書(2017年10月~2018年9月)の公表が3月13日頃になるという見通しを明らかにしております。そして、2018年度予算教書(2017年10月~2018年9月)は、あくまでも米議会が歳入や歳出に関する予算関連法案を独自に作成して審議することになっており、ここで難航して、マーケットの雰囲気が一変することも十分考えられます。

 トランプ大統領は、1兆ドル規模のインフラ投資を投入して、雇用を拡大すると述べてきました。ちなみに、米国の2016年度の財政赤字が7581億9000万ドル(IMFによる推計値)です。そして、リーマンショックの影響を受けて過去20年間で最大の財政赤字となった2009年の赤字額は1兆8960億1000万ドルです。こうした現在と過去の財政赤字を見比べれば、「1兆ドル規模のインフラ投資」を政府予算で実現するのは不可能なことが伺えます。そこでトランプ大統領は、民間財源で「1兆ドル規模のインフラ投資」を実現させるというのですから、驚かされます。1兆ドルは、約114兆円ですから、円換算すると、その規模の大きさが伺えます。米国の人口は日本の4倍程度ですから、米国が114兆円規模のインフラ投資をするということは、「日本で28兆5000億円規模のインフラ投資」をするのと同じぐらいの規模です。日本の平成28年度一般会計予算は約96兆円であり、その内、歳出の33%を占める社会保険が約31兆円ですから、税金で実現できる規模ではありません。トランプ大統領が、どうすれば民間財源から1兆ドルも作るのかは疑問が残ります。これらも、今月中旬ごろからの米議会で「2018年度予算教書(2017年10月~2018年9月)」の製作が始まれば、見えてくることでしょう。2018年度予算教書の製作が難航するほどに、これまでの「トランプ政権への希望」が半減し、これまでのリスクオンの流れのマーケットが「厳しい現実」と向かいあうことになりそうです。ここは、リスクオフの流れに期待するところではないでしょうか。