8月1日

トウモロコシ市場パート3

 2015年と2016年の米国産トウモロコシは、共に大豊作となって8月頃に生産コストを大きく割り込む水準まで下落しましたが、共に10月頃にかけて上昇して「現物呼び出し相場」に発展しました。現在のシカゴコーンは、生産コストとされる水準(現時点では430セント付近)を60セントほど割り込んでいることから、2015年や2016年の現物呼び出し相場を上回る規模の上昇に転じる可能性もあります。下記の記事は、私が2015年9月2日と2016年9月1日に配信しました過去記事です。下記の記事は、今年の現物呼び出し相場に向けてのヒントとなりそうです。

 

 

 

下記の記事は、2015年9月2日に私が製作した過去記事です。

2015年09月02日

トウモロコシ市場「これからの現物呼び出し相場を睨んで」

 シカゴ市場の目先の注目は、米農務省より9月11日に発表される需給報告となります。この「9月の需給報告」は特別な意味があり、天候相場から需給相場に移り始めるターニングポイントと位置付けされております。米中西部のトウモロコシの収穫は、10月中旬から11月中旬に行われることから、収穫期前の需給報告となる「9月の需給報告」でその年のおおよその生産高を把握することが出来ます。

 不作観測により春から秋にかけての天候相場でシカゴコーンが上昇を続けても、「9月の需給報告」で不作がほぼ確定されることになれば、暴落に転じることも多いようです。近年では、2008年と2011年、2012年、2013年の夏場にシカゴコーンが8ドル台にまで急騰しましたが、そのいずれも秋から大暴落となりました。不作観測は、天候相場にとって強力な上げ材料となります。しかし、それが需給相場になると「高値では、需要が低下する。」とか「高値では、農家による売り圧力が高まる。」と受け止められて弱材料視される傾向もあります。

 豊作観測により、春から秋にかけての天候相場でシカゴコーンが下落を続けても、「9月の需給報告」で豊作がほぼ確定されることになれば、上昇に転じる傾向もあり、昨年もそのパターンとなりました。豊作観測は、天候相場にとって強力な下げ材料となります。しかし、それが需給相場になると、「安値では、需要が増加する。」とか、「安値では、農家が売り渋る。」と受け止められる傾向もあります。昨年のシカゴコーンは、記録的な大豊作により昨年9月に3.2ドル付近まで下落しました。しかし、昨年のトウモロコシの生産コストが3.95ドルであったことから、「農家による売りしぶり」が発生し、それに「安値による堅調な需要」も加わってシカゴコーンが昨年9月下旬から上昇に転じました。そして、昨年12月中旬に4.17ドルまで上昇し、農家の生産コストを上回ったことで、農家からの大量の売りつなぎを受け、その後は下落に転じた経緯もあります。シカゴ穀物市場では、「天候相場の期間での考え方」と「需給相場の期間での考え方」を理解して、使い分ける必要もあります。

  1エーカーあたりのトウモロコシの生産コストは、昨年の689.24ドルに対して今年は683.88ドル付近が予想されております。先月の米農務省による単収予想が1エーカー当たり166.8ブッシェルですから、683.88ドル÷166.8ブッシェル=4.1ドルとなり、その辺りが生産コストとなるようです。さすがに今年の生産コストは、大豊作となった昨年の生産コスト(3.95ドル)を上回っております。このままシカゴコーンが需給相場に突入すると、「コスト割れで農家が売り渋る。」との観測から上昇に転じ、「現物呼び出し相場」に発展することも予想されます。いくらトウモロコシがたくさん収穫されたとしても、農家が収穫した現物を売却してくれなければ、市場で現物が逼迫することになり、「有りがすれ状態」に陥ります。そうした時に農家による現物売却を促すために秋から価格が上昇する相場を「現物呼び出し相場」といいます。現在のシカゴコーンが生産コストを割り込んでいることから、昨年同様に9月後半からの「現物呼び出し相場」に注目することも一考ではないでしょうか。

 

 

 

下記の記事は、私が2016年9月1日に私が製作した過去記事です。

2016年9月1日

トウモロコシ市場

 9月5日に米農務省から週間作柄・育成進展状況が発表されます。そして9月12日に米農務省から需給報告が発表されます。例年であれば、米国産トウモロコシの収穫作業が10月中旬ごろから開始されます。しかし、今年の単収や生産高が過去最高となる見通しであることから、今年の収穫作業が例年より少し前倒しされて10月上旬ごろから始まる可能性もあります。「9月の米農務省による需給報告」は、収穫開始を翌月に控えたタイミングで米農務省から単収見通しと生産高見通しなどが発表されることから、その年の最終的な生産高を占う上でも重要視されます。それにより、「9月の米農務省による需給報告」の発表を終えると、投資家の関心が天候から徐々に需給へと変化します。今年は、この時期としては生産コストとされる水準をシカゴコーンが大幅に割り込んでいることから、昨年や一昨年以上の現物呼び出し相場に発展する可能性もあります。

下記に米国産トウモロコシの生産コストとシカゴコーンの9月1日付近での水準を記載しております。

2014年:生産コスト=約3.98ドル、シカゴコーン=3.5ドル付近

2015年:生産コスト=約4.1ドル、シカゴコーン=3.6ドル付近

2016年:生産コスト=約3.9ドル、シカゴコーン=3.0ドル付近

(今後の単収見通しが変化すれば、2016年の生産コストとされる水準も変化します。)

 米国産トウモロコシの1エーカーあたりの生産コストは、2014年が約689.24ドル、2015年が約683.88ドルとなり、年によって大きく変化することはありません。しかし、単収(1エーカー当たりの収穫量)が変化すれば、生産コストが大きく変化します。過去5年間の生産コストは、最高が2012年の約5.31ドル、最低が今年の約3.9ドルです。

 2014年と2015年の米国産トウモロコシは豊作となりました。それによりこの時期のシカゴコーンが生産コストを大きく割り込みました。その後、農家の売り渋りを受けて現物呼び出し相場に発展し、2014年と2015年のシカゴコーンは、10~12月頃に生産コストとされる水準を少し上回るところまで上昇しました。この時期の米国産トウモロコシの生産コストとシカゴコーンとのかい離幅は、2014年が約0.48ドル幅、2015年が約0.5ドル幅、2016年が約0.9ドル幅となっております。それにより今後のシカゴコーンが現物呼び出し相場に発展すれば、10~12月頃にかけての上げ幅が2014年や2015年を大幅に上回る可能性もあります。仮にシカゴコーンが4ドル付近まで上昇すれば、現在1万9500円付近で推移している東京とうもろこしが2万6000円付近まで上昇する計算となります。