11月7日

原油市場

 昨夜のNY原油は、中東の地政学的リスクの高まりに反応して上昇しました。サウジアラビアのサルマン国王の息子であるムハンマド皇太子率いる汚職対策委員会による王族や現職閣僚らの汚職摘発が金融市場に動揺を与えたようです。サウジアラビアの王子11人や現職閣僚4人、元閣僚ら数十人を拘束したことで、330億ドルに及ぶ拘束された個人資産の規模も市場の動揺を与えたようです(サウジアラビアの王子は千人以上とも言われております)。これによりムハンマド皇太子の権限が強化され、同国の改革が進むとの見方もあります。

 サウジアラビアのサブハン国務相は6日、レバノン政府に対して「サウジアラビアへ宣戦布告した政府として扱われる」と述べ、「イランが支援するレバノンのヒズボラに対する侵略行為」を指摘しました。それにより、サウジアラビアとイランとの緊張も高まりました。一方、レバノンでは4日にハリル首相が辞任しました。ハリル首相は、自身への暗殺計画があったと述べると共に、イランとヒズボラがアラブの混乱の種をまいていると指摘しております。そして、ヒズボラと関係が近いアウン大統領が6日、レバノンンの国民の結束を呼び掛ける事態となったようです。

 レバノンのハリル首相はイスラム教スンニ派であり、イランやヒズボラはイスラム教シーア派です。スンニ派とシーア派の対立は、長きにわたるアラブ諸国全体の宗教問題です。スンニ派のハリル首相が辞任に追い込まれたことを、スンニ派政権国家であるサウジアラビアのサブハン国務相は、「イランが支援するレバノンのヒズボラに対する侵略行為」と指摘したのです。ハリル首相は、現在はサウジアラビアで保護されており、辞任の数日前にハリル首相に対する暗殺計画が阻止されたとの報道もあります。

 サウジアラビアの王子や官僚数人が汚職摘発されたり、レバノンを巡りサウジアラビアとイランとの関係が悪化したところで、中東の原油生産が変化するというものでもありません。それに、サウジアラビアとイランは、昔から宗教対立により「犬猿の仲」です。ただ、原油価格が上昇基調を続けてきたことにより、現在の原油市場が上げ材料に敏感に反応したようです。これが原油市場の下落基調中であれば、この程度の中東の地政学的リスクでは、原油市場はほとんど反応しなかった可能性もあります。そうした意味では、「原油市場の売り場到来」と考える必要もあるのかもしれません。