11月21日

トルコリラ

 レザ・ザラブ氏に対する裁判が、11月27日から予定されておりましたが、12月4日からに変更となりました。レザ・ザラブ氏は、経済制裁下のイランのマネーロンダリングに深く関わったことで、トルコやイランによる口封じのための暗殺を恐れたレザ・ザッラブ氏は、アメリカに逃亡してマイアミで逮捕されました。レザ・ザラブ氏にとっては、「米国の留置所が一番安全」と判断したのかもしれません。レザ・ザラブ氏は、すでに経済制裁下のイランへのマネーロンダリングにエルドアン大統領関与していたことを供述しているのですが、逮捕から裁判まで1年9カ月もかかった理由を考える必要がありそうです。

 レザ・ザラブ氏の裁判を行えば、エルドアン大統領関与が明確となり、米国や西側諸国とトルコとの関係が悪化します。トルコとの関係悪化は、「IS掃討作戦の障害になる」との判断から、レザ・ザラブ氏の裁判を遅らせていた可能性は高そうです。

 トルコはシリアと約900㎞、イラクと約400㎞の長い国境で接する国です。イスラム国(IS)と闘うシリア人民兵の訓練や装備提供などをトルコ領内で強化しておりました。また、多国籍軍は、IS掃討作戦のための空爆や人員&武器輸送の多くをトルコ経由で行っておりました。そのために、IS掃討作戦において米国は、トルコと対立する訳にはいきませんでした。

 2014年時点のISの支配領域は8万8000平方キロを超え、地中海沿岸からイラク首都のバグダッドの南にまで及んでいました。しかし、ISの拠点とされるイラクのモスルが7月に制圧され、シリアのラッカも10月に制圧されました。そして、ラッカから逃れたIS最後の拠点となったイラクのワラも今月になって制圧され、3年間続いたIS掃討作戦が一応の終結を迎えました。IS掃討作戦が一応の終結を迎えたことで、米国がレザ・ザラブ氏の裁判を行うことを決定したと考えれば自然です。

トルコの国防相は11日、ロシアの地対空ミサイルS400の購入を完了させたことを明らかとしました。NATOに対立しているロシアから地対空ミサイルを購入したことを受けて、NATO加盟国の多くから批判が高まっております。その矢先にNATOと対立しているロシアとイランとの3国でトルコが「シリア平和協議」の合意に向けて動いているのですから、これは、「トルコの西側諸国からの決別」と受け止めるべきかもしれません。米国としては、IS掃討作戦も一応の終結を迎えたので、「トルコのエルドアン大統領に対してそろそろ引導を渡してもいい時期」と判断したのかもしれません。こうした背景を考えれば、レザ・ザラブ氏の裁判が進んでエルドアン大統領関与が明確となれば、米国や西側諸国からトルコへの投資も激減することになりそうです。それにより、しばらくはトルコリラに対する弱気な見方も一考かもしれません。