12月15日

トルコリラ

トルコ中銀は昨夜、政策金利(8.0%)や翌日物貸出金利(9.25%)、翌日物借入金利(7.25%)などは、市場予想通りに据え置きとなりました。しかし、後期流動性貸出金利を市場予想の1%引き上げに対して0.5%引き上げて12.75%としました。それにより、トルコリラへの失望売りが膨らみました。

 トルコ統計局からのGDP発表を受けてエルドアン大統領は12日、「トルコリラの弱さは、現時点での景気の現状を反映したものではない。為替レートがすぐに適切なバランスを取ると確信している。短期的な操作によって金利を引き上げるという圧力を正当化しても仕方がない。」と、利上げに否定的な発言をしておりました。こうしたエルドアン大統領からの圧力によりトルコ中銀の利上げ幅が削られたのかもしれません。

 レザ・ラザブ問題やインフレ問題を背景にトルコリラが先月28日に対円や対ドル、対ユーロで最安値を記録しました。それに対して複数のトルコ要人から「中銀としての独立性」や「利上げ」などに対する発言があり、トルコリラが2週間ほど上昇しました。しかし、昨夜のトルコ中銀発表で「後期流動性貸出金利の0.5%の引き上げ」に留まったことにより、トルコリラに対する失望売りが加速しました。FRBが利上げしたことにより、メキシコや中国など複数の国が米国の利上げに追随しました。今回のトルコの利上げは、「米国の利上げに対する追随利上げ」程度の引き上げ幅であり、レザ・ラザブ問題やインフレ問題を打ち消すほどの利上げ幅にはならなかったようです。それにより、しばらくトルコリラに対して弱気な見方も一考かもしれません。




12月15日

メキシコペソ

 NAFTA再交渉への不透明感の高まりを受けてメキシコペソ売りが進んでおります。そして、メキシコ中銀は昨夜、政策金利を市場予想通りに0.25%引き上げました。隣国の米国の利上げに追随するかたちとなりました。メキシコ中銀は、「製造業の輸出が落ち、投資が弱まっている。NAFTAの不透明さが成長を引きつづき弱めている。」と指摘しております。

 メキシコの輸出は、米国向けが約79%を占めます。そして、輸出品目は、自動車&自動車部品が約26%、電気機器が約19%、原油が約11%を占めます。メキシコの輸出の約79%が米国向けですから、今後のNAFTA再交渉の行方がメキシコ経済に大きな影響を与えることになります。トランプ大統領は、税制改革や貿易不均等是正などで米国経済を押し上げようとしております。税制改革は、クライマックスを迎えようとしているようです。税制改革が済めば、貿易不均等に本格的に着手する可能性が高まります。これまで5回のNAFTA再交渉では、米国とメキシコが双方とも全く歩み寄りを見せない展開となりました。NAFTA再交渉は、3月末までにあと2回予定されております。

 今週開催された世界貿易機関(WTO)閣僚会議では、米国の反対で閣僚宣言を採択出来ずに閉幕しました。それに対して米通商代表部のライとハイザー代表は12月14日、「国益を追求した一部の国々の勝利」と述べております。これでは、今後のNAFTA再交渉で米国の歩み寄りは期待できそうもありません。

 米国祭貿易委員会は12月7日、カナダ産針葉樹木材に対する「米業界の被害」を認定し、制裁関税の適用が確定しました。米国とカナダとメキシコは、北米自由貿易協定(NAFTA)を結んでいるのですが、それに反してカナダ産針葉樹木材への制裁関税を確定させました。これは、「米国のNAFTA脱退への意思表示」との見方もあるようです。

 カナダ産針葉樹木材への制裁関税の適用や、世界貿易機関(WTO)閣僚会議での米国の反対などで、今後のNAFTA再交渉が更に難航することが予想されます。格付け会社のS&Pは、NAFTAが実質的に撤廃されれば、現在「BBB+」のメキシコのソブリン格付けを見直す方針を表明しております。NAFTA再交渉が来年3月末までに合意に達しなければ、メキシコのソブリン格付けが引き下げられて、「メキシコペソの暴落」を招く可能性もあります。
(メキシコペソの日足、BIT)
メキシコペソ・円の日足(BIT)


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