今朝発行しました週間レポートの一部をご紹介します。参考にどうぞ。


トウモロコシ市場の総括
(3月9日発行レポート)

 3月8日のシカゴコーンは、米農務省発表を受けて大幅高となりました。それにより、東京トウモロコシが年初来高値を大きく更新しました。米農務省による需給報告では、2017~2018年度の世界のトウモロコシ期末在庫予想を前月発表値の2億309万トンから1億9917万トンに下方修正し、市場予想を大きく下回りました。アルゼンチンの生産高見通しが、前月発表値の3900万トンから3600万トンに下方修正されました。アルゼンチン産トウモロコシの作柄悪化が市場予想を上回っていたようです。

 3月8日のシカゴコーンが385セントまで上昇しましたので、テクニカル的な高値のメドが、昨年の高値(2017年7月6日の391セント)付近となりそうです。その高値を突破すると、次のテクニカル的な高値のメドは、2016年の高値(2016年6月8日の439セント)となりそうです。

世界3大穀倉地帯の1つであるであるアルゼンチンのパンパス穀倉地帯での乾燥気候が昨年11月頃から続いており、大豆やトウモロコシの生産高減少が懸念されております。来月にかけてアルゼンチン産トウモロコシの収穫作業が行われますが、このままいけば、作付けから収穫まで続いた乾燥気候により、生産高がかなり減少することになります。そして、米プレーンズ地域の冬小麦が乾燥気候の影響を受け続けており、1月中旬からシカゴ大豆とシカゴコーン、シカゴ小麦がそろって安定した上昇基調を続けております。特にアルゼンチンの大豆とトウモロコシ生産においては、ラニーニャ現象による乾燥気候が収穫期まで続くと見られており、それにより東京トウモロコシもしばらく上昇基調を続ける可能性もあります。

過去13年間でラニーニャ現象が6回発生しましたが、その内、冬季に発生したことが4回あり、そのすべてでシカゴコーンが上昇トレンドを形成しております。冬季にラニーニャ現象が発生すると、北半球で寒波被害が多発し、南半球で熱波や乾燥被害が多発するとされております。年初から日本や米国、欧州で寒波が多発していることや、昨年11月からアルゼンチンやオーストラリア、ニュージーランド、南アフリカなど南半球の広範囲で乾燥被害が多発していることなどは、ラニーニャ現象によるものと見られております。グリーンランド東部と北極中部の2月の平均気温が、観測史上初めて9日連続で0℃を上回りました。また、北極の海氷は、1月から2月にかけて記録的な減少が観測されておりそうです。地球の空調装置の役割を果たす北極の気温が異常なほど上昇しており、それに伴うラニーニャ現象の影響が年初からの穀物相場の上昇基調を支えているのですから、この流れはしばらく続きそうです。

しかし、気象庁が先月9日に発表したエルニーニョ監視速報では、「今後春の間にラニーニャ現象が終息する可能性が高い(70%)。」と指摘しております。気象庁の予報通りであれば、4~5月頃にラニーニャ現象が沈静化する見通しです。アルゼンチン産トウモロコシの収穫期が3~4月ですから、収穫期までラニーニャ現象による乾燥被害を受け続ける可能性もあります。気象庁より3月9日14時から最新のエルニーニョ監視速報が発表されますので、そちらも注目でしょう。

一方、ラニーニャ現象が終息すれば、その後、エルニーニョ現象が発生する可能性があることを気象庁が指摘しております。3~5月にエルニーニョ現象が発生すれば、米南部と米北東部で低温被害が多発するとされております。米国産トウモロコシは、4月中旬から作付けを開始し、4月下旬から発芽期を迎えます。発芽期は、4月中旬~5月中旬頃です(米穀倉地帯は広大ですから、南部と北部で発芽時期に1カ月ほどの差が生じます)。6~8月にエルニーニョ現象が発生すれば、米南西部と米南東部で低温被害が多発し、米南西部で多雨被害が多発するとされております。

2000年以降でエルニーニョ現象が発生したことは5回あり、その5回とも夏季にシカゴコーンが1~3ドル幅程度の上昇トレンドを形成しております。これまでのパターンでは、夏季にエルニーニョ現象が発生すれば、米国産トウモロコシの作柄悪化を背景にシカゴコーンが高確率で上昇基調を形成しております。そして、冬季にラニーニャ現象が発生すれば、アルゼンチン産トウモロコシの作柄悪化を受けてシカゴコーンが高確率で上昇トレンドを形成しております。トウモロコシ相場では、「冬季のラニーニャ現象発生」と「夏季のエルニーニョ現象発生」となれば、上昇トレンドを強める傾向があるようです。一方、夏季にラニーニャ現象が発生したことが過去13年間で2回ありましたが、それいずれもシカゴコーンが下落トレンドを形成しました。トウモロコシ相場では、ラニーニャ現象やエルニーニョ現象がどの時に発生するかが重要となります。発生時期が違えば、エルニーニョ現象やラニーニャ現象が発生しても、シカゴコーンが下落基調を強めることもあるようです。

現在の見通しでは、ラニーニャ現象が春ごろに沈静化する確率が高く、夏ごろからエルニーニョ現象が発生する可能性があるそうです。気象庁の先月のエルニーニョ監視速報から、エルニーニョ現象の発生確率の発表を始めております。それにより、アルゼンチン産トウモロコシのラニーニャ現象による作柄悪化を背景に春頃までシカゴコーンが上昇し、夏ごろになれば、エルニーニョ現象による米国産トウモロコシの作柄悪化を背景にシカゴコーンが更に上昇する可能性もあります。今年の穀物相場は、「冬季のラニーニャ現象発生」に続いて「夏季のエルニーニョ現象発生」となる可能性が出てきただけに、東京トウモロコシに対する夏場に向けた長期的な強気継続も一考ではないでしょうか。


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