5月17日

原油市場

 ブレント原油が79.4ドルまで上昇し、80ドルの大台まであと60セントに迫りました。「大台初乗せは売り」という相場格言もあり、ブレント原油が80ドルの大台乗せとなれば、8カ月続く原油市場の上昇基調に対して達成感が広がる可能性もあります。

 昨日発表されたEIA週間石油在庫は、原油140万バレル減、ガソリン380万バレル減、ディスティレート10万バレル減となりました。米原油生産は、前週比2万バレル増の日量1072万3000バレルとなりました。昨日早朝にAPIから発表された原油在庫が490万バレル増となっていただけに、その後のEIAからの発表値が140万バレル減となった事で、原油価格の上げ足が強まりました。その後、国際エネルギー機関(IEA)からの需要見通しが上値を圧迫しました。IEAから発表された今年の原油の世界需要見通しでは、前年比で日量140万バレル増となり、これまでの日量150万バレル増見通しから下方修正されました。

 9:30時点の電子取引で、ブレント原油が79.4ドル、NY原油が71.7ドルとなり、両原油の価格差が7.7ドルにまで拡大しております。最近の中東の地政学的リスクの上昇に反応してブレント原油がより大きく上昇し、両原油の価格差拡大となりました。それを受けて米原油輸出がこの1カ月間で2倍近くまで増加しております。そうした米原油輸出の増加が、米原油在庫の減少要因の1つとなっております。

 ブレント原油が80ドルの大台乗せとなれば、これまでの上昇基調に対する達成感が広がる可能性もあります。そして、80ドルの大台乗せに失敗すれば、失望感が広がることになります。しかも、ロシアのノバク・エネルギー相は4月20日、「原油相場が1バレル=80ドルに達する可能性がある。」と述べる一方で、「80ドルはファンダメンタルズの裏付けがない水準になるだろう。」と述べておりました。ブレント原油と中東産原油は、ほぼ同じ水準で推移しております。現在のブレント原油が79.4ドルまで上昇しており、この水準に対する「ファンダメンタルズの裏付け」がないのであれば、「大台初乗せは売り」という相場格言通りに売り参入するタイミングかもしれません。
米原油輸出


5月17日

原油市場パート2

 米イスラエル大使館のエルサレム移転式典が14日に行われ、それに反対するパレスチナ人による3万5000人にも及ぶ大規模デモが発生しましたが、翌15日に数百人規模にまで縮小し、16日は更に減少しました。デモでの死者も14日に55人、15日に2人となりましたが、16日は0人と伝えられており、抗議デモがかなり沈静化してきました。

最近の原油価格の上昇に対して、供給不足によるものではなく、地政学上の要因を受けた一時的なものに過ぎないとの見方を、複数のOPEC関係者筋が16日までに明らかとしていることも伝えられております。

昨日まであれほど騒がれていたイスラエルとパレスチナの対立に関するニュースも、今朝からのメジャーニュースでは、ほとんど取り上げられなくなってきました。「ニュースは発表された瞬間に古臭いものとなる」や「採算を買い、人気を売る」という相場格言もあり、今回のようにインパクトの大きな材料の投入で買い人気が高まった原油市場に対する弱気な見方も一考かもしれません。