5月17日

原油市場パート4

ブレント原油は、今朝から79.3~79.6ドル付近での小動きを続けております。80ドルの大台まであと40~50セントにまで迫っておりますが、4年6カ月ぶりの80ドル台とあって、テクニカル的にもかなり緊張した水準となってきました。ドル円は、この5時間で50銭ほど円安に進みました。

複数のOPEC当局者からも、「最近の原油価格の上昇は、中東の地政学的リスクの上昇による一時的な上昇」との意見が伝わっております。それに加えて、「米国がイラン核合意から離脱し、イランへの経済制裁を再開させる」との観測でブレント原油がこの1カ月ちょっとで14ドルも上昇しております。現在の原油価格を維持するためには、新たな強気ファクターの出現なしには難しいように感じられます。

米国の圧力に反してEUがイラン核合意の存続とイランへの経済協力維持を目指す方針で一致したことを受けて、イラン産原油輸出に対する不安感は沈静化に向かうものと思われます。そして、米大使館のエルサレム移転に追随した国は、現時点ではグアテマラだけですので、この問題も時間経過と共に風化することも考えられます。シリアにおけるイラン軍とイスラエル軍との衝突もかなり沈静化してきたようです。

米国が大使館をエルサレムに移転すること自体は、1995年の米議会で決定したことであり、それを米大統領が3代にわたって延期し続けてきました。それをトランプ大統領が大統領選のマニフェスト通りに移転を実行しました。この米大使館のエルサレムへの移転も、トランプ氏が大統領に当選した時から予想されていたことですから、これで原油市場に対して、「織り込み済み」と考えるべきかもしれません。

 2010年6月に欧米6カ国がイランへの経済制裁を発動させた時は、イランの原油輸出が日量150万バレルほど減少し、原油価格が1年間で40ドルほど上昇した経緯もあります。しかし、今回は、米国単独での経済制裁となる予定であり、欧州勢は、昨日のEU首脳会談でイラン核合意の存続とイランへの経済協力維持を目指す方針で一致したので、米国単独による経済制裁が実施されたとしても、イラン産原油輸出の減少はあまり望めない可能性もあります。しかも、「経済制裁再開によるイラン産原油輸出の減少」を警戒してブレント原油がこの1カ月強ですでに14ドルほど上昇しております。こうしたことを考えると、原油価格の上昇も限界にきているのかもしれません。

イランのザンギャネ石油相は先ほど、「原油価格は1バレル=60~65ドルが合意的な水準。米国は、シェールオイルの成長を支えるために原油価格を高止まりさせようとしている。」と述べております。そして、ここにきて複数のOPEC関係者から「原油価格の上昇は一時的」とか、「地政学的リスクの上昇に反応した投機的な上昇」とのコメントが増えてきました。以前のOPEC要人発言であれば、原油価格の上昇を望む内容が多かったのですが、ここにきてこれまでと違った内容の発言が増えてきました。

原油価格の高騰により2011年からの4年間で米原油生産が日量400万バレルほど急増し、それがその後の原油価格の大暴落に繋がった経緯もあります。そして、米国は、年初からの4か月間で日量92万バレルほど増産しております。このままでは、米国の増産ペースが更に加速することになります。本日のイランのザンギャネ石油相発言は、かなり衝撃な内容でした。OPEC要人が原油高騰に対する火消し的な発言を多用し始めたことを考えれば、原油価格の上昇も限界にきているのかもしれません。