6月8日

原油市場

複数の情報筋は6月6日、ベネズエラ国営石油会社(PDVSA)が、主要輸出港2港でタンカーの渋滞が解決せず、顧客が瀬取り(洋上での船荷積みかえ)に応じない場合は、不可抗力条項の発動を検討していることを明らかとしました。しかも、ベネズエラの主要ターミナルからの原油受け渡しが予定より1カ月近く遅れており、沖合に停泊している石油タンカーが2400万バレル以上の原油積込みをまっているそうです。これらのニュースを見る限りでは、かなり強力な強気ファクターと受け止める方もおられるかもしれませんが、「そんなことは、何カ月も前から織り込んでいる」と感じる方もおられるかもしれません。

ベネズエラの主要輸出港2港でタンカーが渋滞しているだけですから、原油の受け渡し方法を瀬取り(洋上での船荷積みかえ)に変えるだけで、ある程度解決することです。そして、原油受け渡しが予定より1カ月近く遅れているそうですが、それも今に始まったことでもなく、そのような状況でも同国の5月末の原油輸出が日量145万バレルを保っております。

ベネズエラの原油輸出は、昨年6月時点で日量250万バレル弱でしたが、その後、緩やかな減少を続け、昨年9月時点で200万バレル弱まで減少しました。しかし、米国の経済制裁の影響を受けて昨年10月から急激に減少し、昨年12月時点で160万バレル付近まで減少し、5月末時点で日量145万バレルです。同国の原油生産は、1年間で日量100万バレルほど減少しましたが、それでも年初からの5カ月間では日量15万バレル程度の減少に留まっております。

 米国政府は昨年8月25日、米国の金融機関に対し、新たに発行されるベネズエラの国債やペトロレオス社(ベネズエラ国営石油会社)の債券の取引を禁じる措置が盛り込まれた制裁を発動しました。それにより、46ドル付で推移していたブレント原油が上昇基調を開始し、先月下旬に80ドル付近まで上昇しました。昨年8月から始まったブレント原油の9カ月に及ぶ上昇トレンドのきっかけは、米国によるベネズエラの国債や石油会社に対する制裁発動でした。ベネズエラの原油輸出が1年間で100万バレルほど減少しましたが、年初からの5カ月間では日量15万バレルほどの減少に留まっており、ここにきて更に日量5万~10万バレルほど減少したとしても、その程度では米国の5日間~10日間の増産で穴埋め出来る程度の事です。米国の原油生産は、年初から130万8000バレルも増産しており、この1カ月間で日量34万バレルほど増産しました。

原油価格が上昇すれば、強材料が誇張され、原油価格が下落すれば、弱材料が誇張されることはよくあることです。そうした誇張された材料に惑わされることなく市場を冷静に分析する必要がありそうです。
ブレント原油の週足

 

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