6月28日

原油市場パート2

ゴールドマン・サックスは、先週末のOPEC総会による増産合意を受けて、「我々の2018年下半期の価格見通しに対するアップサイドリスクが減少した。」と指摘しました。しかし、昨夜は、原油価格に上昇余地があるとの認識を示し、原油の買い推奨を発表しました。NY原油が68ドル付近の時に「アップサイドリスクが減少した」と指摘したにも関わらず、NY原油が73ドル付近まで上昇した昨日に買い推奨を発表しております。しかも、NY原油が今月18日の安値から10ドルほど上昇してから買い推奨が発表されても、納得できない投資家も多いのかもしれません。

イランン産原油輸出は、2011年時点で日量254万バレルまで増加しましたが、2011年秋からの欧米6カ国によるイラン産原油の禁輸措置を受けて、2014年時点で日量111万バレルまで落ち込みました。その後の欧米6カ国とのイラン核合意による経済制裁解除を受けて、現時点でイラン産原油輸出が日量250万バレルまで回復し、ようやく経済制裁前の水準まで戻しました。

2011年秋からの欧米6カ国による禁輸措置で日量143万バレルもイラン産原油輸出が減少しましたが、今回は、欧州諸国の意向に反して米国が単独でイラン産原油の禁輸措置を行います。しかも、国連安全保障理事会決議の意向に反して禁輸措置が行われるだけに、米国の禁輸措置に賛同する国は少なそうです。仮に、今回の米国による禁輸措置が以前の欧米6カ国による禁輸措置の半分の効力を発揮することになれば、イラン産原油輸出が日量71万5000バレルほど減少する計算となります。

イラン産原油輸出(日量250万バレル)の63%が中国やインド、トルコ、イタリア、フランス向けです。それら5カ国は、米国の呼びかけに反してイラン産原油の輸入を続ける可能性が高いと見られております。しかし、米国による経済制裁の影響でドル決済に問題が生じる可能性もありますので、それら5カ国のイラン産原油輸入が20%減少するとすれば、イラン産原油輸出が日量31万5000バレル減少する計算となります。そして、それら5カ国以外の国々のイラン産原油輸入が50%減少することになれば、イラン産原油輸出が日量46万2500バレル減少する計算となります。それにより、日量31万5000バレル+46万2500バレル=日量77万7500バレルほどイラン産原油輸出が将来的に減少する可能性もあります。

米国は、年初より日量140万8000バレルも増産しました。サウジアラビア国営会社のサウジアラムコは、7月の原油生産を日量1080万バレルまで増加させる計画であり、同社の5月の原油生産(日量1003万バレル)から日量77万バレルもの増産を計画しております。しかも同社の生産余剰は日量200万バレルと発表されております。ロシアは、今回のOPEC合意を受けて日量20万バレルほど増産すると見られておりますが、サウジアラビアの増産ペースを考慮すれば、年内に30~40万バレル増産する可能性もあります。

米国の対イラン経済制裁が注目されているところにベネズエラやリビア、ナイジェリアの原油輸出減少のニュースが重なったことで、原油価格の上げ足が速まりました。しかし、ベネズエラやリビア、ナイジェリアに関しては一時的な問題ですので、時間経過と共に輸出量の回復が弱材料視されることになりそうです。米国が同盟国に対してイラン産原油輸入の完全停止を呼びかけたニュースはインパクトも大きかったのですが、国連安全保障理事会決議や欧州諸国の意向に反する米国単独による対イラン経済制裁に限界があると考えるべきかもしれません。