9月28日

原油市場

 サウジアラビア国営石油会社のサウジアラムコは、10~12月にクライス油田とマニファ油田の生産能力が日量55万バレル前後増加する見通しであることが関係者からのコメントで伝えられております。また、サウジアラビアがイラン産原油輸出の減少分を補う為に、OPEC加盟国と非加盟国で日量50万バレル増産する可能性について協議していることが、関係者からのコメントとして伝えられております。イランの原油輸出が4月時点の日量280万バレルから9月に日量200万バレルまで減少しましたが、あと日量50万バレル程度減少しても、OPEC加盟国と非加盟国で日量50万バレル増産すれば補える計算となります。

上記の関係者からのコメントを見ても、サウジアラビアなどは、イラン産原油があと日量50万バレルほど減少すると考えていることは注目でしょう。以前に欧米6カ国による対イラン経済制裁が実施された時でも、イラン産原油輸出は日量100万バレルまでしか減少しませんでした。今回は、米国1国だけでの対イラン経済制裁であり、ユーロ圏諸国と中国、インド、トルコなどは、イラン核合意の継続を支持しており、イランからの原油輸入をこれまで通り行う姿勢を示しております。米国による対イラン経済制裁が11月から実施されても、イラン産原油輸出の減少分は限定的といえるのかもしれません。仮にイラン産原油輸出があと日量50万バレル減少しても、それは、世界生産の0.5%程度が減少するにすぎません。それよりも、米国を中心とした貿易摩擦の高まりを受けて世界経済成長が鈍化することによる原油需要の減少分の方が大きいと考えるべきかもしれません。世界貿易機関(WTO)は9月27日、2019年までの世界貿易見通しを下方修正しました。それによると、世界の物品貿易の成長率は2018年に3.9%(4月発表値の4.4%から下方修正)、2019には3.7%(4月発表値の4%から下方修正)となり、2017年の4.7%からかなり減速するとの見通しを示しました.これだけ下方修正されるのであれば、それ江に伴う世界の原油需要の減少も考えるべきかもしれません。

アルジェリアのエネルギー相は26日、「原油価格が1バレル7-~80ドルのレンジを維持することを望んでいる。」と述べました。そして、ロシアのノバク・エネルギー相は26日、「OPEC加盟国と非加盟国は、協調減産順守率が100%になるように減産できる。」と述べました。更に、「1バレル70~80ドルの原油相場は均衡が取れており、原油市場が不安定となった場合は産油国に増産する能力がある。」と述べました。更に、ゴールドマン・サックスの26日付けの顧客向けレポートでも、「ブレント原油が年内、70~80ドルの水準で安定的に推移する公算が大きい。」との見通しております。

ブレント原油が今月24日に8ドルを突破し、翌25日に一時82.55ドルの年初来高値を記録しました。その直後からゴールドマン・サックスやロシアのノバク・エネルギー相、アルジェリアのエネルギー相などが連続して、「原油価格は70~80ドルが望ましい」というような内容をコメントしており、サウジアラビアが増産に向けて動いていることも伝わってきました。こうしたことは、5月にもありました。

ブレント原油は、5月17日に80.50ドルまで上昇して当時の年初来高値を記録しました。しかし、その直後にサウジアラビアから増産計画が前倒しで発表されました。それにより、原油相場が下落基調に転じた事は記憶に新しいところではないでしょうか。注目は、ブレント原油が5月17日に80.50ドルまで上昇する数日前にトランプ大統領がサウジアラビアやロシアに対して増産要請をしたことでしょう。そして、今回もトランプ大統領がサウジアラビアやロシアなどに増産要請をしており、その数日後にサウジアラビアからの増産計画が伝わりました。トランプ大統領は、今月25日の国連総会で35分ほど演説し、OPEC加盟国に対して原油価格の値上げを止めることなどを呼びかけました。更に、トランプ大統領は20日、自身のツイッターで「わが国が中東諸国を防衛してやっているのだ。あの国々はアメリカなしで長く安泰ではいられないというのに、連中はますます原油価格を吊りあげている。これは覚えておくからな。OPECカルテルは原油価格を引き下げろ、今すぐに。」とコメントしております。

これまで中東の紛争等で米国軍事力の加護を受けてきたサウジアラビアなどイスラム教スンニ派国家としては、米国大統領の強い要求を無視することは難しいと考えるべきかもしれません。そして、米国がロシアに対して先月中旬に経済制裁を強化しており、今後も更に強化する可能性があると指摘されているだけに、ロシアとしては、米国大統領の強い要望を無視する訳にはいかないと考えるべきかもしれません。