10月25日

原油市場パート2

カショジ氏殺害事件を受けて世界的にサウジアラビアへの批難が高まっており、サウジアラビアと米国との関係悪化が危惧されております。しかし、サウジアラビアが増産への姿勢を強めているので、原油価格が急落を続けております。更に、米国政府が今月から米戦略政府備蓄の放出を開始したことも、原油在庫の増加傾向を強める要因となっております。

 昨夜発表されたEIA週間石油在庫統計は、原油630万バレル増、ガソリン480万バレル減、ディスティレート230万バレル減、クッシング原油97万バレル増となりました。製油所稼働率は、0.3%上昇の89.2%です。

 エネルギーの不需要期を迎えており、原油在庫の増加傾向が9月中旬から続いております。一方、米国政府が今月から米戦略石油備蓄の放出を始めており、それと不需要期が重なり、米原油在庫の大幅増加が続いております。10月が不需要期のピークであり、12月が需要期のピークですから、11月前半まで原油在庫が増加傾向を続ける可能性があります。

 トランプ政権が公開した2018年度予算教書に、戦略石油備蓄 の半分を10年以上かけて売却することが示されております。そして、トランプ大統領が先月述べたように10月1日から米戦力石油備蓄の放出が行われております。現在の米原油在庫が4億2278万バレルですが、戦略石油在庫は6億5647万バレルもあります。米原油生産が8年間で2倍ほどにまで増加しましたが、米戦略石油備蓄は、8年間で9%ほどしか減少しておりません。ここまで米原油生産が増えれば、いつまでも大量の米戦略石油備蓄を抱えておく必要はありません。米戦略石油在庫をある程度放出して現金化すれば、その資金がトランプ政権の新たな政策などに利用できます。しかも、米ガソリン価格の高騰が中間選挙でトランプ政権のマイナス要因となるのであればなおさらここで米戦力石油備蓄を放出する必要があります。米戦略石油備蓄は、米原油在庫の1.5倍ほどの莫大な量を有するので、トランプ政権が本気になって戦略石油備蓄の放出に動けば、米原油在庫がかつてないほどの大幅増加傾向を示すことになりそうです。「政策に売り無し」という相場格言もあり、トランプ大統領が原油価格の下落を強く要望している姿勢に反して原油相場を強気することは避けるべきかもしれません。
米原油在庫
米原油生産と米戦略石油在庫