10月25日

金市場パート3

NYダウは、8月下旬から10月上旬にかけて1000ドルほど上昇し、その間に米10年債利回りが2.8%付近から3.26%付近まで約0.46%も上昇しました。しかし、NYダウが10月上旬の高値から2368ドルの下落となりましたが、それでも米10年債利回りが10月8日の高値(3.261%)から0.15%程度しか低下しておりません。これでは、米国株がここで急反発したとしても、すぐに米10年債利回りが3.2%を超えて米国株への高値警戒感が高まってしまいそうです。

トランプ大統領が2016年11月の米大統領選で勝利した当時の米10年債利回りはまだ1.5%程度でしたので、その後のトランプ相場で米国株が上昇基調を続けながらも米10年債利回りも上昇を続けました。しかし、ここまで米10年債利回りが上昇すれば、「米国株に投資するより米長期金利に投資する方が安全で得策」と考える投資家が増えても当然かもしれません。特に米中貿易戦争の長期化により来年の米国経済成長が鈍化すると見られているだけに、なおさら「米国株に投資するより米長期金利に投資する方が安全で得策」と考えるのかもしれません。1兆ドル(約112兆円)規模のファンドを運用するノーザン・トラストのマクドナルド最高投資責任者(CIO)は10月15日、「リスクを何年もオーバーウエートにしてきたが、戦術的リスクポジションを中立に変えた。米金融当局が中立の地点で引き締めをやめず、最終的にはリスク意欲と経済成長を抑制する水準にまで金利を引き上げるとの懸念を深めているためだ。当局が引き締め過ぎるリスクは高まり続けている。」と述べております。一方、米投資会社であるダブルライン・キャピタルのガンドラックCEOは、年初時点で、「米国債利回りの上昇ペースが速すぎれば、年内に株価は下げる。」との見通しを発表しており、9月18日には、「米国の30年国債利回りが2営業日連続で3.25%を超えて終了した場合、情勢を一変させることになりかねない。」と警告しておりました。実際にその通りになってから米国株が暴落しました。

ノーザン・トラストや国際通貨基金(IMF)、モルガン・スタンレー、ブルームバーグ&バークレイズなど複数の金融機関から米国株に対する警戒が今月になって伝わってきました。それらを裏付けるかのようにNYダウが急落しております。一方、国際通貨基金(IMF)は10月9日、世界経済見通しを引き下げました。それによると、「制裁関税を各国・地域に仕掛ける米国が、最も大きな打撃を受けると分析した。」と指摘しております。米中貿易戦争の長期化が予想されているだけに、ここで無理して米国株を強気する必要もないのかもしれません。今回の7~9月期決算でのS&P500種採用企業の利益見通しが前年比21%増見通しと近年最高の利益見通しとなっているものの、今回の四半期決算で来年の1~3月期の業績見通しを引き下げる米国企業も多いだけに、米国経済成長力がピークを迎えた可能性も高まっているようです。それだけに、しばらく「リスクヘッジの金相場」に注目することも一考かもしれません。