11月19日

金市場「今月末の米中通商交渉を見据えて」

先週末のNYダウは、序盤で143ドル安まで下落しましたが、トランプ大統領の米中貿易交渉に対する楽観的な発言を好感して上昇し、123ドル高で取引を終えました。

トランプ氏は16日、中国が貿易問題で対処の用意がある項目のリストを送付してきたことを明らかとし、「リストはほぼ完全だが、大きな項目が4つか5つ欠けている。」と述べました。そして、「中国は合意成立を望み、対処する用意のある項目のリストを送ってきた。リストは広範囲にわたる。まだ受け入れ可能なものではないが、ある時点で中国に関しては極めてうまくやれるだろう。」とも述べました。更に、月末の米中貿易交渉が決裂すれば、米国が2670億ドル相当の中国製品に対して追加関税を実施することについては、「その必要はないかもしれない。中国は合意を望んでいる。」と述べました。このコメントを受けて先週末のNYダウがプラス転換したようです。

ペンス米副大統領は17日、APEC首脳会議開幕に先立ってAPEC・CEOサミットにて、「われわれはよくなることを望んでいるが、中国がやり方を改めるまで、米国は方針を変えない。」と述べ、トランプ政権がさらなる対中追加関税の発動に動くこともあり得ることを示唆しました。更に、「主権を危うくしかねない外国からの借金を受けるべきでない。われわれはパートナーを借金の海に溺れさせることはない。われわれはあなた方の独立を危険にさらしたり、買収したり、強要したりしない。米国は正々堂々と取引する。」と述べ、中国が推進する一帯一路政策を念頭に、「われわれは束縛するベルトや一方通行路をオファーしない。」とも述べました。

APEC首脳会議は18日、同会議として初めて首脳宣言で合意できないまま閉幕しました。議長国のオニール首相はAPEC開幕時に、加盟21カ国のどの国が合意できなかったかとの質問に対し、「2つの大国だ」と答え得ました。この「2つの大陸」とは、「アメリカ・ファースト」の姿勢を貫いている米国と、一帯一路政策を推進している中国の事であることは、安易に想像できます。同会議として初めて首脳宣言で合意できないまま閉幕したことからも、米国と中国との通商面での対立が伺えます。この流れでは、今月末の米中首脳会談による通商交渉が決裂する可能性は高そうです。今月末の米中通商交渉が決裂することになれば、リスク志向の株式市場が大きく下落し、リスクヘッジ志向のNY金が大きく上昇する可能性が高まります。

11月19日

金市場パート2

 NY金は、先週13日に一時1196ドルまで下落しましたが、その後は3日続伸となりました。先週末のNYダウは、米中通商交渉に対する楽観的なトランプ大統領発言を好感して123ドル高となりました。しかし、米国と中国の対立によりAPEC首脳会議は18日、同会議として初めて首脳宣言で合意できないまま閉幕しました。それにより再び米中貿易協議に対する警戒が高まっており、本日のNYダウ先物は、10時時点で80ドル安です。ここにきて再び米中通商交渉への警戒感が高まってきただけに、リスクヘッジ志向の金相場に注目も一考かもしれません。

 NY金におけるファンドポジションは、8月4日から10月9日にかけて売り越しに転じ、「16年ぶりの売り越し」を記録しました。その後、10月16日から4週連続で買い越しとなりました。しかし、11月13日時点で再び売り越しとなりました。11月13日時点では、前週の「1万9026枚の買い越し」から「9247枚の売り越し」に転じました。

ファンドの買い越し枚数が最も増加したところが天井圏となり、ファンドの買い越し枚数が最も減少したところやファンドの売り越し枚数が最も増加したところなどが底値圏となる傾向も強いだけに、ファンドが16年ぶりに売り越しに転じているということは、それだけ底値圏の可能性が高いということかもしれません。


NY金のファンドポジション