11月28日

原油市場パート4

 欧米6カ国とイランは、2015年にイラン核協議の最終合意に達しました。それにより、イラン側は、核施設の大幅な縮小や条件付き軍事施設査察を受けいれました。それに対して欧米6カ国は、それまでの対イラン経済制裁を解除しました。しかし、米国は、今年5月にイラン核合意から離脱し、イランへの経済制裁再開を発表しました。一方、イラン核合意継続を支持した欧州5カ国は、これまで通りに対イラン経済制裁の解除を継続することになりました。しかし、実際には、トランプ政権の制裁を警戒して欧州諸国の多くがイラン産原油輸入に前向きでないようです。

 ベルギーでイラン・欧州核協力フォーラムが今週27日に開催され、イラン外務次官は、「米国が対イラン制裁を再発動したことで、核合意から得るイランの利益はゼロに近づいた。核合意から何の利益も得られなければ、イランは核合意から離脱することになるだろう。米国の制裁にもかかわらずイラン産原油を購入するための欧州のコミットメントについて、イランの忍耐は限界に来ている。イランとしてはウランの純度を20%まで上げるために再濃縮することができる。」と述べております。

 米国がイラン産石油輸出に対するドル決済への制裁を課しているので、欧州諸国がユーロ決済でのイラン産石油購入のための新金融機構の設置を検討しているのですが、米国の制裁を恐れて新金融機構の受け入れをする国がないことに対して、イラン外務次官が「イラン産原油を輸出できなかったり、新金融機構取引ができないのであれば、核合意がイランの為になるとは思わない。」と述べ、核合意からの離脱を示唆する発言をしております。イランとしては、欧州諸国との核合意継続により、核施設の大幅な縮小や条件付き軍事施設査察を受けいれているものの、それでもイラン産原油輸出が日量240万バレル付近から日量110万バレル付近まで落ち込んだのですから、イランが怒っても当然かもしれません。現在の水準程度のイラン産原油輸出量であれば、イラン核合意前の欧米6カ国からの経済制裁を受けていた時の最低水準とあまり変わらないのですから、このような状態が続けば、イランが欧州諸国との核合意から離脱することも時間の問題かもしれません。イランが欧州諸国との核合意から離脱することになれば、イランの核開発やミサイル開発が再開され、中東の地政学的リスクが高まり、原油価格の上昇する可能性も高まります。トランプ大統領がイランへの制裁強化を示唆しているだけに、イランが欧州諸国との核合意から離脱するのは時間の問題かもしれません。