12月7日

原油市場

 昨夜発表されたEIA週間石油在庫統計では、米原油在庫が732万バレル減となり、11週間ぶりの減少となりました。11月23日時点まで10週間連続で米国原油在庫が増加し、NY原油も下落基調を続けました。しかも、トランプ大統領の指示で米戦略石油備蓄の放出が10月1日から11月30日まで実施されましたので、その間の米原油在庫が例年以上に増加しました。しかも、米原油輸入量が9カ月ぶりの水準まで減少し、米原油輸出量がこの2カ月間で5割ほど増加して過去最高となりました。ブレント原油とWTI原油の価格差が10ドル付近まで拡大し、それにより割安となった米国原油の輸出量が急増したようです。そして、イラン産原油輸出が減少したことも、米国原油油種のシェア拡大に繋がりました。そうした「輸出量急増&輸入量減少」の流れにより、10月と11月の米国原油在庫が例年以上に増加しました。そして、ようやく11月30日時点の米原油在庫が大幅減少に転じました。12月~1月が冬場のエネルギー需要の最盛期ですから、これから2カ月間程は、米原油在庫の減少傾向が続きそうです。

12月1日に開催されたロシアのプーチン大統領とサウジアラビアのムハンマド皇太子による会談では、「OPECプラス」による協調体制を2019年も継続することで合意しました。5日に開催された共同閣僚監視委員会では、2019年1月1日から6カ月間の減産を行うことで暫定的に合意しされましたが、減産量は決まりませんでした。OPEC側がロシアに日量25万~30万バレルの減産を要請しましたが、ロシア側は、「日量14万バレル程度の減産には応じられる」との姿勢を示しました。そして、6日に行われたOPEC総会では、減産が暫定合意されましたが、減産量は決まりませんでした。そして、ロシアのノバク・エネルギー相は、OPECの減産要請に対して、直ちにロシアに戻ってプーチン大統領と協議することになりました。そして、本日のOPECプラスによる閣僚会議には、プーチン大統領から指示を受けノバク・エネルギー相も参加する予定です。

ロシアは、これまでシリア問題やイラン問題などで米国より度重なる経済制裁を受けてきました。そして、今回のウクライナ問題では、ユーロ圏諸国からの制裁も警戒されております。そうした背景を考えれば、ロシアとしては、「トランプ大統領の意向に逆らって減産への積極的な姿勢を見せる訳にはいかない」と考えるべきかもしれません。トランプ大統領が自身のツイッターで12月5日に、「OPECが石油生産を持続し、制限はしないよう望む。原油価格高騰は世界中が希望しないし、目にしたくもない。」とコメントした直後ですから、なおさらでしょう。それでもロシアの外貨獲得が原油を中心とした資源材の輸出に依存しているだけに、ロシアは、これまでOPECの減産要請に対してかなり渋い姿勢を示しているものの、最終的に今夜の閣僚会議である程度の減産量に応じると考えるべきかもしれません。

ロシア側は、「日量14万バレル程度の減産には応じられる」という姿勢を示しているので、本日の閣僚会議で減産合意が出来ないという可能性はかなり低そうです。これまでは、トランプ大統領の要請を受けて、サウジアラビアやロシアを中心に増産競争が行われてきました。しかし、本日の閣僚会議で減産合意となれば、OPECプラス諸国によるこれまでの増産競争も終了となります。そしてブレント原油は、10月3日の高値から11月29日の安値まで29ドルほど下落しましたが、現在の水準は、11月29日の安値から3ドル程度しか上昇しておりません。しかも、11月26日から9営業日連続で58~63ドル付近でのボックス圏相場を続けております。こうなれば、今夜のOPECプラスによる閣僚会議を睨んで、「原油市場に対する強気な見方」も一考かもしれません。

12月7日

金市場

 NY金は、昨夜のNYダウが序盤で一時784ドル安まで下落した時に1250ドル付近まで上昇しましたが、NYダウが79ドル安まで戻して取引を終えると、NY金は1242ドル付近まで下落しました。「リスクヘッジ志向の金相場」にとっては、リスク志向のNYダウの値動きに敏感に反応しております。

 NYダウの安値は、10月29日が2万4122ドル、11月23日が2万4268ドル、12月6日が2万4242ドルとなり、2万4122ドル~2万4268ドル付近での下値抵抗線を形成しているようです。昨夜のNYダウが一時2万4242ドルまで下落しましたが、あと少しで下値抵抗線を割り込んで新たなトレンドが始まるところでした。

 ここにきて、米2年債利回りと米10年債利回りの差が2007年以降で最低となり、長期金利と短期金利が逆転する「逆イールド」に迫ってきました。過去40年間に発生した景気後退のタイミングでは、そのすべてで「イールドカーブのフラット化」が発生しているだけに、景気後退や経済原作に対して警戒する投資家が増えてきたように感じられます。

 ビットコインは、4カ月半ほど70万円付近で小動きを続けていましたが、先月中旬から急落し、現在は38万円付近まで下落しております。ビットメインのマイニングリグ「アントマイナーS9」を利用した1ビットコインの採掘の損益分岐点が7000ドルと推定されておりますので、ビットコインが4カ月半ほど70万円付近で小動きを続けてきたことも頷けます。しかし、ビットコインが38万円付近まで下落し、採掘コストとされる水準の半値近くにまで下落したことは注目です。今年の1月頃は、ビットコインが250万円付近まで暴騰し、NYダウも最高値を更新するなど、リスク志向の銘柄が上昇基調を強めました。しかし、ここにきてビットコインが暴落し、米国株まで急落するなど、ここにきてリスク志向の銘柄に異変が起きているようです。

今月になって、経済ニュースに「炭鉱のカナリア」というフレーズが多く掲載されるようになってきました。米国住宅市場における転売目的の投資家(ホームフリッパーズ)の収益率が大きく低下したことや、米国の長期金利と短期金利のフラット化などに関しても、「炭鉱のカナリア」というフレーズがよく使用されております。更に、消費者信頼感の悪化や米国株の大幅下落に対しても同様です。経済ニュースに「炭鉱のカナリア」というフレーズが多く使用されてきたということは、「それだけ投資家心理が弱気に傾いてきた。」ということでしょう。そして、金相場がここにきて上昇基調を強めてきたことに対しても「炭鉱のカナリア」というフレーズが目立ってきました。また、「景気後退」や「経済減速」というフレーズもかなり増えてきました。このままでは、米国や欧州の投資家が、クリスマス連休前のポジション整理を例年以上に強めることも考えられます。「一葉落ちて、天下の秋を知る」ということわざがあるように、経済ニュースにおいて「景気後退」や「経済減速」、「炭鉱のカナリア」などのマイナス思考的なフレーズが急増してきたことを受けて、「リスクヘッジ志向の金相場」に注目することも一考かもしれません。