1月30日

原油市場パート2

ベネズエラの民主化を迫る南米13カ国からなる「リマ・グループ」は今月4日、ペルーのリマで外相会合を開催し、「ベネズエラのマドゥロ大統領の2期目の大統領就任は正当性がない。」との声明を発表しました。その後、ベネズエラのマドゥロ大統領の2期目の大統領就任式が今月10日に行われました。そして、ペルー政府は今月10日、マドゥロ政権幹部ら100人の入国禁止措置を発表しました。また、パラグアイ政府も今月10日、ベネズエラとの国交断絶を発表しました。そして、米国政府は今月22日、マドゥロ大統領ではなくグアイド暫定大統領を支持することを公表しました。更に米国政府は今月28日、ベネズエラ国営石油会社を制裁対象に加えることを発表しました。マドゥロ大統領が不正とされる選挙で2期目の大統領に就任したことに対して、欧米諸国や南米周辺国からの反発が高まっております。

米国政府がベネズエラの国政石油会社(PDVSA)を制裁対象に加えましたが、これは、PDVSAからの石油輸出を制限するのではなく、PDVSAに支払う原油代金をマドゥロ大統領政権の口座からグアイド暫定大統領政権の口座に変更するようにということであり、更に、PDVSAが米国に保有している資金を凍結するというものです。一方、PDVSAのケべド石油相は29日、米国がPDVSAを制裁対象に加えたことを受けて部分的な不可抗力条項の発動を含めた複数の措置を検討していることを明らかとしました。それにより、PDVSAが石油輸出に対して部分的な不可抗力条項を発動し、石油輸出を減少させる可能性もあります。ベネズエラの原油生産量が日量約120万バレルであり、その内の日量約50万バレルが米国に輸出されておりますので、米国輸出分の日量約50万バレルが不可抗力条項の発動を受けて停止する可能性があります。

金融大手の多くは、米国による制裁措置を受けてPDVSAの債券取引を停止しました。そして、グアイド暫定大統領は、イングランド銀行に対して同行に保管されているベネズエラ政府の金現物31トンをマドゥロ大統領政権に返還しないように要請し、イングランド銀行もマドゥロ大統領政権による金現物の返還要請に応えておりません。欧米諸国がマドゥロ大統領政権への資金流入を阻止し、グアイド暫定大統領政権に資金が流入するように仕向けているのは、マドゥロ大統領政権の影響力低下や軍部との繋がりを断つことが目的のようです。

これまでマドゥロ大統領政権からは、何一つ経済指標が発表されておらず、グアイド国会議長兼暫定大統領率いる野党から同国のインフレ率の発表が行われていただけです。ベネズエラのインフレ率が年内に1000万%にまで上昇することをIMFが予想しており、同国の経済状況が極めて悪化しているようです。ベネズエラでは、今月22日からデモが拡大しており、既にデモによる死者が26名となった事も報告されております。そして、グアイド暫定大統領は今月28日、国民に対して反政府デモを新たに起こすよう呼び掛けております。更にグアイド暫定大統領は、反政府支持者に対して、兵隊に一部法的保護を保証する恩赦案を記載したパンフレットを本日30日に配布することを呼び掛けており、軍部のマドゥロ大統領政権放れを狙っているそうです。軍部がマドゥロ大統領政権かグアイド暫定大統領政権のどちらに付くかが重要となりそうです。マドゥロ大統領政権が近々崩壊する可能性は高いものの、短期的には、同国の政情不安が原油市場の強材料となりそうです。ただ、マドゥロ大統領政権が崩壊し、グアイド暫定大統領政権が政権に付けば、米国がベネズエラに2017年8月から実施している経済制裁が解除され、同国原油生産が増加に転じる可能性もあります。ベネズエラは、世界最大の原油埋蔵量を誇りますが、資金難により原油生産が低迷しております。それだけに、ベネズエラの今後の動向は、原油市場にとって重要となります。