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白金市場の総括

 AMCUやNUMなどの大手労働組合と複数の南ア大手白金鉱山会社が3年前に締結した「3年間の労働契約」が今週末で期限切れとなり、来週から3週間ほど労使交渉が本格化することになります。南ア白金鉱山会社では、2~3年ごとに労使交渉が本格化します。3年前の南ア白金鉱山会社での労使交渉では、NY白金が950ドル付近から1200ドル付近まで急騰しました。

3年前の労使交渉では、南ア大手白金鉱山の多くが大幅な賃上げ合意となりましたが、その後の白金価格が低迷を続けました。フォルクス・ワーゲン社のディーゼル車における排ガス不正問題を受けてディーゼル車離れが進み、世界の白金需給が供給過剰に陥り、それに伴う白金価格の大幅下落を受けて、多くの南ア大手白金鉱山会社の経営が大幅に悪化しました。昨年秋には、ロンミン社が身売りを決定すると共に大幅リストラ計画を発表し、インパラ社も大幅リストラ計画を発表しました。この3年間の白金価格の低迷を受けて南ア白金鉱山会社の多くで経営悪化が大きく進みましたので、今回の労使交渉で大幅賃上げ要請には応じられそうもありません。

 一方、昨年8月頃からパラジウム価格が8割ほど高騰し、それに伴ってPGMバスケット価格(白金族金属バスケット価格)が大幅に上昇し、今年になってから南ア白金鉱山会社の多くが黒字転換しました。南アフリカでは、白金採掘量とほぼ同等のパラジウムが採掘されます。パラジウムやロジウムなど白金以外の白金族金属の高騰を受けて労働組合側は、大幅賃上げ要請を決定しました。最大手労働組合のAMCUは、アングロ・プラチナ社やインパラ社、ジバニエ・スティルウォーター社に対して最低賃金の基本給を現状の月額1万1500ランドから1万7000ランドへ「48%の賃金引上げ要請」を決定しました。これにより、今回の労使交渉は難航が予想されます。

 3年前の南ア白金鉱山での労使交渉では、大手労働組合であるAMCUは、最低賃金を1万2500ランドに引き上げることを求めて7月上旬から南ア白金鉱山大手3社(アングロ・プラチナ社、インパラ社、ロンミン社)に対して労使交渉を行い、それと共に東京白金が3100円付近から1か月間で750円も上昇しました。そして、当時のNUMは、アングロ・プラチナ社に対して14.5%の賃上げを要求しましたが、アングロ・プラチナ社からの回答が6.75%の賃金引き上げ提示だったことを受けて、賃金紛争を宣言し、強硬姿勢を示しましました。今回の労使交渉でも、ライバル同士であるAMCUとNUMは、互いにより良い労働条件を求めて競い合うことになりそうです。

 AMCUとNUMは、以前より縄張り争いを続けており、時折衝突して死傷事件も何度も起こしてきました。AMCUとNUMの組合員数千人が槍やナタで武装してロンミン社白金鉱山で対峙し、それを沈静化させようとした警察隊との衝突で34名の白金鉱山労働者が死亡した2012年に発生した「マリカナの惨劇」は有名であり、それを受けて当時の東京白金が3500円付近から1か月間で900円ほど急伸しました。今回の労使交渉でもAMCUとNUMが互いに競い合ってより良い労働条件を求めることで労使交渉が難航することも考えられます。2~3年おきに本格化する南ア大手白金鉱山会社での労使交渉では、これまで高確率で労使交渉が難航して白金価格がそれに反応し続けてきただけに、これから3週間ほど東京白金に対する強気な見方も一考かもしれません。