7月17日

原油市場パート2

今朝発表されたAPI週間石油在庫統計は、原油が270万バレル減予想に対して140万バレル減、ガソリンが92万バレル減予想に対して47万バレル減、ディスティレートが61万バレル増予想に対して620万バレル増となり、クッシング原油が110万バレル減となりました。この発表を受けて今朝のNY原油の電子取引が58.0ドル付近から57.5ドル付近まで下落し、8時頃からは57.6ドル付近で小動きを続けております。原油在庫の減少量の少なさやディスティレート在庫の大幅増加が圧迫要因となりました。

英国がイランの石油タンカーを拿捕したことに対してイランのハメネイ最高指導者は昨日、英国に対して報復措置を取ると述べましたが、なぜかイランはUAE国籍の石油タンカーを拿捕しました。それに対してイラン政府は、「ペルシャ湾内で技術的問題が起きたタンカーの支援要請を受け、修理の為にイラン海域へえい航した。」と表明しております、こうした一連の動きからも、イラン政府の方針に対してイランのイスラム革命防衛隊の一部が先走って動いてしまったように感じられます。イスラム革命防衛隊は、ハメネイ最高指導者に直結する軍隊であり、イラン政府の枠外の組織とされており、過激な行動をとるころでも有名です。また、先月から2回ほどホルムズ海峡で石油タンカーが攻撃された事件がありましたが、その犯人もイスラム革命防衛隊が有力視されております。

イランの石油輸出は、2018年4月までは日量250万バレル強もありましたが、先月時点で日量24万バレルほどにまで落ち込みました。そして、イラン中央銀行が今年の4月に4桁のデノミを実施するほどイラン経済も悪化しているだけに、イラン国内で不満が高まっております。そうした背景を考えれば、英国海軍にイランの石油タンカーが拿捕されたことによる石油収入減に対しての怒りも相当なものでしょう。そうした怒りや不満がイスラム革命防衛隊の一部を過激な行動に駆り立てたのかもしれません。

しかし、問題は、UAEの石油タンカーが昨日拿捕された(イラン側は、故障のためにえい航したと伝えております)ことを受けても、昨夜の原油市場が下落を続け、今朝からの原油市場も上昇に転じていないので、「原油市場の地合いがかなり悪化した」と考えるべきかもしれません。