7月24日

原油市場

イランのイスラム革命防衛隊(イラン革命防衛隊)は、今月になって英国とUAE,パナマの国籍の石油タンカーを拿捕したとされております。そして、ホルムズ海峡の安全確保に向けた欧州諸国と連帯する英国の計画に対して、フランスやイタリア、デンマークが賛同しました。一方、イランのアラグチ外務次官は昨日、ルドリアン仏外相に対して、石油輸送の大動脈であるホルムズ海峡の安全保障に尽力し、いかなる海上輸送の妨害行為も容認しない考えを表明しました。

イラン政府やイラン政府軍がホルムズ海峡の安全保障に尽力したとしても、イランのイスラム革命防衛隊は、ハメネイ最高指導者に直結する軍隊であり、イラン政府の枠外の組織とされており、過激な行動をとるころでも有名です。それでもイラン政府高官がホルムズ海峡の安全保障に尽力することを表明したことは注目でしょう。しかし、1~6月の石油の世界需給が「日量90万バレルの供給過剰」となり、今年後半も供給過剰が続く見通しを国際エネルギー機関が今月12日に発表しております。そして、日量29万バレルの石油生産を誇るリビア最大のシャララ油田がここにきて操業を再開しましたので、「中東の地政学的リスクで買われたところは売り」となる可能性も高そうです。

国際通貨基金(IMF)は昨夜、2019年と20年の世界経済見通しを再び下方修正しました。しかも、世界の経済見通しが下方修正されたのは、昨年10月以降で4回目となります。そして、今年の世界貿易見通しは、前回の3.4%増から2.5%増にまで大幅に引き下げられました。IMFは、「世界経済が微妙な分岐点にある。各国とも二国間の貿易不均衡や国際的な不一致への対処として関税を利用すべきでない。見通しへの主要な下振れリスクは引き続き通商やハイテク技術を巡る緊張であり、これは世界のサプライチェーンを著しく損なう恐れがある。」と指摘しております。米国の金利見通しが「2019年は年4回の利上げ見通し」となるほど昨年末までの米国経済成長力が力強かったのですが、それからたった7カ月間で「2019年は年2回の利下げ見通し」へと大きく変貌するほど米国経済成長力が弱くなっただけに、「米国や世界の経済成長見通しの低下=原油消費量の減少」が原油市場上値を重くしているようです。

7月24日

原油市場パート2

 米国政府は22日、対イラン制裁に違反してイラン産原油を輸入したとして、中国の石油商社を制裁対象に指定することを発表しました。そして、レイFBI長官は昨夜、上院司法委員会の公聴会で、「中国は気付かれないように経済的優位に立とうと総力を結集し取り組んでいる。現在進めている知的財産窃取に関する1000件を超える調査は、ほとんど全て中国に起因する。スパイ防止活動という点で米国に最も深刻な脅威となっているのは中国だ。中国は米国を犠牲にして、ひそかに経済のはしごを上ろうとしている。この脅威は深く多様かつ幅広く厄介であり、基本的に米国の全ての産業に影響を及ぼす。」と述べております。一方、中国は本日公表した「新時代における中国の国防」という題目の国防白書で「米国が主要国間の競争を招いた。米国が防衛支出を拡大し台湾に武器を売却することで、世界の戦略的な安定を阻害している。」と指摘しております。中国は今回、4年ぶりに国防白書を発表しました。

米国務省は今回、台湾への武器売却計画を承認したことにより、22億ドル相当の武器が台湾に販売される見通しです。一方、中国には「1つの中国政策」というのが有り、「中国大陸や台湾、香港、マカオは不可分の中華民族の統一国家でなければならない。」という政策があります。「1つの中国政策」に反して米国が台湾に武器を販売することを決定しましたので、米国と中国との確執がより一層強まるものと思われます。そして、昨夜のレイFBI長官の議会発現や中国が本日発表した国防白書からも、米中貿易戦争が長期化することは避けられないのかもしれません。更に、米国が中国の石油商社を制裁対象に指定したことも、米中両国の関係悪化に繋がりそうです。それらを受けて米中両国の関係悪化によるリスクオフの流れが長期化し、原油価格を更に下落させる可能性もあります。