メール情報会員に本日配信しました週間レポートの一部をご紹介します。
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金市場の総括

 NY金は、この2か月半で250ドルほど上昇し、8月13日時点で一時1531ドルまで上昇しました。しかし、翌14日のNYダウが800ドル安となって今年最大の下げ幅を記録しましたが、同日のNY金が前日高値を更新できませんでした。NY金は、8月8日頃から上昇ペースがかなり鈍化し、上値の重さが気になります。

 月初よりNYダウが下落基調を強め、それと共にリスクヘッジ志向の米長期債とNY金が上昇基調を強めました。安全志向が強いとされる米長期債への買い人気が高まり、それと共に米30年債利回りが過去最低を記録し、米10年債利回りが3年ぶりの水準まで低下しました。それを受けて、米2年債利回りと米10年債利回りが逆転するという「逆イールド現象」が12年ぶりに発生し、景気後退観測が高まりました。

 米10年債価格は、昨年12月の安値(117.42ドル)から上昇を続け、今年の8月7日には一時130.86ドルまで上昇しました。しかし、その後は、高値更新がなかなか出来ませんでしたが、昨日の取引で一時131.35ドルまで上昇しました。それにより、テクニカル的な次の高値のメドは、2016年6月の高値(134.23ドル)となりそうです。しかし、昨年12月から一本調子な急上昇を続けてきただけに、高値警戒も必要でしょう。リスクヘッジ志向の米長期債が下落に転じることになれば、同じリスクヘッジ志向の金相場も下落する可能性が高まります。特にNY金におけるファンドの買い越し枚数が3年ぶりの水準まで急速に膨らんだだけに、金相場に対しても警戒が必要でしょう。

 NY金におけるファンドの買い越し枚数は、この2カ月間で4倍ほどにまで急激に膨れ上がり、8月6日時点で「29万2545枚の買い越し」となりました。その後もNY金が50ドルほど上昇しているので、CFTCから今夜発表されるファンドの買い越し枚数が31~32万枚付近まで増加している可能性も高まってきました。過去5年間でファンドの買い越し枚数が最も増加したタイミングは、2016年7月5日の31万5920枚、次いで2016年7月12日に記録した30万1920枚であり、過去5年間で買い越し枚数が30万枚を超えたのは2週間しかありませんでした。

NY金は、総取組高が50~60万枚程度でこの20年間ほど安定した市場規模を続けております。それにより、ファンドの買い進みにも限界があります。8月6日時点でのファンドの買い越し枚数が29万2545枚ですが、買い玉総数は35万558枚であり、それに対する総取組高は60万317枚ですから、「NY金市場の買い玉の約6割がファンドの買い玉」というかなり異常な状態となっております。そして、NY金における商業玉の売り玉が46万1335枚にまで膨らんでおり、「NY金市場の売り玉の77%が商業玉の売り玉」となっていることも警戒が必要でしょう。

8月6日以降でNY金が50ドルほど上昇しているだけに、CFTCから今夜発表されるNY金におけるファンドの買い越し枚数は注目でしょう。そして、NY金は、「ファンドの買い越し枚数のピーク=天井」となる可能性がかなり高い銘柄であることは多くの投資家が認識しているだけに、買い越し枚数が30万枚を突破したことで、利益確定に動くファンドが急増する可能性もあります。この2カ月間ほどでファンドの買い越し枚数が4倍ほどに膨れ上がりましたが、その間にNY金が250ドルほど大幅上昇している訳ですから、多くのファンドが利食い場を探していると考えるべきかもしれません。しかも、ファンドの買い越し枚数が3年ぶりの水準まで膨らんでおり、NY金が6年ぶりの高値まで上昇しているのですからなおさらでしょう。

 米国が対中制裁関税の第4弾を発表し、それに対して中国政府が同国の国営企業に対して「米農産物の不買」を呼びかけ、米中貿易戦争が過熱し、リスクオフの流れも強まりました。それを受けて米長期債やNY金が大幅高となりました。しかし、どこで米中通商交渉が大きく前進するかわかりません。先月からの香港問題と台湾問題を受けて米中関係がかなり悪化し、それが米中貿易戦争を過熱させる要因となりました。米国政府が台湾への武器販売を許可したことや、米国の香港への政治的介入は、米国としても中国からの反発が強まることは理解していたはずです。そうした台湾問題と香港問題で米中関係が悪化していたところで「対中制裁関税の第4弾」の発表ですから、こうした米国政府の行動は、トランプ大統領流の「米中通商協議を合意に導くための布石」かもしれません。ここで、台湾問題や香港問題、対中制裁関税の第4弾などに米国政府が譲歩すれば、今回の米中通商協議が一気に解決する可能性も高まります。それだけに、金相場に対して、そろそろ「売り場探し」も一考かもしれません。