10月29日

金市場

 米10年債価格は、129.5~130.1ドル付近でⅧ営業日ほど小動きを続けていましたが、昨夜から保合い下放れとなり、本日10時時点で129.1ドルまで下落しております。世界最大級のリスクヘッジ銘柄である米10年債がここにきて再び下落トレンドを開始した可能性も高まってきました。

 米10年債は、この1年間で118ドル付近から132ドル付近まで14ドル幅も安定した上昇トレンドを形成しました。ここまで大きくて安定した上昇トレンドを形成したのは7年ぶりです。日米欧の債券全体が共に1年前から大型上昇トレンドを形成しました。そうした債券市場全体の上昇トレンドを受けて、NY金もこの1年間で370ドルほどの大型上昇トレンドを形成することになりました。

 米10年債は、9月2日の高値(131.88ドル)と10月4日の高値(132.03ドル)でダブルトップを形成しており、ここにきて「保合い下放れ」となってきたことで、下落トレンド入りの可能性が高まってきました。しかも、今週31日のFOMCでは、0.25%の金利引き下げが予想されております。「FRBが今週末に利下げを実施すれば、年内は更なる利下げはない」という見方がコンセンサスになりつつあり、これで利下げが打ち止めとなる可能性もあります。「これで利下げが打ち止め」との観測が高まれば、米国債や金相場が急落に転じる可能性もあります。

 現在の米国の政策金利は1.75~2%ですが、今週末には1.5~1.75%にまで引き下げられる見通しです。米国の政策金は、2001年のITバブルがはじける前は6%台であり、2018年のリーマンショックの前は5%台でした。そうして5~6%台の政策金利があったので、「政策金利の大幅引き下げ」という大型緩和策の投入で不況を脱出しました。しかし、今週末には米国の政策金利が1.5~1.75%まで引き下げられる見通しですので、ここで米国の経済が悪化すれば、以前ほどの大幅利下げによる大型景気対策を打ち出すことが出来ません。しかも、トランプ政権がこれまで減税措置を推し進めてきたので、これから米国の景気が悪化しても、減税措置による大型景気対策を打ち出すことも難しくなります。そして、現在の米国経済が景気後退に陥っている訳ではないので、今週末の利下げにより米国のこれまでの利下げサイクルが打ち止めとなる可能性は高そうです。そうなれば、これまでの利下げサイクルで買われ続けてきた金相場に対する利益確定の売りが急増することは十分考えられます。