本日製作した週間レポートの一部をご紹介します。参考にどうぞ。




白金市場の総括

 NYパラジウムは、この1年半で900ドル付近から2200ドル付近まで1300ドル幅ほど大幅上昇しました。しかも、この5カ月で800ドルほど上昇し、昨年12月下旬からだけでも300ドルほど上昇しました。ガソリン車の触媒に多く使用されるパラジウムやロジウムの高騰が続いており、それを受けてディーゼル車の触媒に多く使用される白金まで昨年7月頃から上昇基調を続けております。そして、年初からパラジウムや白金の上昇力が更に強くなってきました。

中国の自動車販売台数が昨年11月から急回復しており、昨年の中国のタイヤ輸出は前年を上回りました。排ガス基準が国3以下のディーゼルトラックが今年から使用禁止となるので、昨年秋からディーゼルトラックの買い替え需要が増加しました。そうしたことも影響して中国の自動車ディーラー在庫が昨年後半でかなり減少し、前年を下回るほどの在庫水準となったようです。

中国全土では、7月1日から正式に「国6(ユーロ6に相当)」の排ガス基準が導入され、国5以下の排ガス基準の触媒を搭載した自動車の販売が出来なくなります。そして、インド全土では、排ガス基準が現状のバートラ4から、4月よりバートラ5を飛び越えてバーラト6へと引き上げられます。欧州の排ガス規制は、2021年から全ての新しい乗用車が基準への適合を義務付けられ、厳格なEU規制に適合できなかった場合、数100万ユーロ単位という巨額の罰金を科されることになります。これから中国やインドや欧州で排ガス基準が引き上げられるので、自動車触媒用金属の需要が今後大幅に増加する子が予想されます。それに反応してガソリン車の触媒に多く使用されるパラジウムやロジウムの上昇基調が強まっており、今後も更に上昇する可能性があります。それを受けて、ディーゼル車の触媒に多く使用される白金もここにきて上昇力を強め始めました。

欧州でのディーゼル車の排ガス不正問題を受けてディーゼル車放れが進み、欧州の自動車販売に対するディーゼル車の割合が2016~2018年に52%から31%まで大幅低下し、それを受けてディーゼル車の触媒に多く使用される白金需要が減少しました。それを受けてNY白金が2016~2018年の3年間で、1250ドル付近から900ドル付近まで下落しました。しかし、ドイツ政府や欧州の大手自動車メーカーが古いディーゼル車から新型車への買い替え助成金を2018年秋から実施し、それを受けてディーゼル車放れが止まりました。

欧州や中国、インドの排ガス基準がこれから更に引き上げられることになるので、自動車用触媒金属であるパラジウムやロジウム、白金が更に上昇する可能性も高まります。特にパラジウムは、「年内に鉱山会社の在庫が無くなる」との見方もあるだけに、更に上昇力を強める可能性が高そうです。ディーゼル車の触媒では、パラジウムの使用量を減らして、白金の使用量を増やすことは可能です。その反面、ガソリン車の触媒では、パラジウムの使用量を減らして、白金の使用量を増やすには、技術的に数年必要とされております。

世界的に自動車の排ガス基準が引き上げられる流れとなってきたことを受けて、消費者の環境問題への意識が今度更に高まることも予想されるだけに、今後の大気汚染対策として、ガソリン車の購入量が減少し、ガソリン車に対して二酸化炭素(CO2)や粒子状物質(PM)、窒素酸化物(NOX)の排出量が少ないクリーンディーゼル車の購入が増加する可能性も高いだけに、ディーゼル車の触媒に多く使用される白金に対する中長期的な強気な見方も一考かもしれません。

NYパラジウムがこの1年半で900ドル付近から2200ドル付近まで大幅上昇しており、2009年の200ドル付近から12年間で11倍となりました。パラジウムが今後更に上昇する可能性も高いだけに、「自動車触媒用におけるパラジウムの代替銘柄としての白金」への注目が今後更に高まりそうです。一方、NY白金は、2018年の高値が22521ドルであり、2011年の高値が1905ドルですが、現在は995ドル付近で推移しております。史上最高値を2018年11月から更新し続けているNYパラジウムに対して、過去10年間の最安値から200ドル程度しか上昇していないNY白金に対する出遅れ物色も一考かもしれません。