2月13日

前場市況1「沈静化しつつある新型ウイルスへの脅威」

 昨夜のS&P500種株価指数は最高値を更新し、昨夜のNYダウとナスダック総合株価指数も引け値ベースで最高値を更新するなど、新型ウイルスへの脅威が後退し始めたことでリスクオンの流れが強まりました。昨夜のNYダウは275ドル高となり、本日のNYダウ先物は、9時時点で105ドル安です。

中国国家衛生健康委員会は12日、中国本土での11日時点の感染者数が前日比2015人増の4万4653人、死者数が前日比97人増の1113人となった事を発表しました。それにより感染者数の増加ペースが1月30日以来の低水準となりました。それに対して中国政府の専門家チームを率いる鐘南山氏は、「中国国内の一部地域では既に状況が改善しており、新たな感染件数が減少している。中国国内における新型コロナウイルスの流行が2月にピークを迎え、4月ごろに終息する可能性がある。」と述べております。

 インフルエンザなどの風邪発症の8割ほどが1~2月に集中しており、コロナウイルスも風邪菌の一種なので、気温上昇と共に感染ペースは鈍化する傾向があります。今月になって初めて新型コロナウイルスの感染拡大ペースが鈍化した事から、「感染拡大の最悪期を過ぎた可能性が高い。」との見方も広がってきました。

ACCUによる武漢市の最高気温予報は、12日が14℃、13日が17℃、14日が14℃、15日が14℃となっており、22日終了週が6~13℃、29日終了週が10~20℃です。武漢市の緯度は鹿児島県とほぼ同水準なだけに、これからの気温上昇と共に新型コロナウイスの感染拡大ペースが更に鈍化する可能性もあります。

湖北省の衛生当局は9日、新型コロナウイルスによる致死率が武漢市で4.06%、武漢市の西に位置する天門市で5.08%に達したことを発表しました。そして、湖北省以外の地域の致死率が0.16%であることも発表しました。新型コロナウイルスによる中国本土での死者数の96%が湖北省となっております。湖北省内の致死率はかなり高いのですが、それは、先月22日より交通封鎖して隔離したことによる医療品や医師不足、医療施設不足などが影響しております。武漢市周辺地域を隔離したことで、湖北省以外への感染拡大をかなり抑えましたが、その代償として、隔離地内での感染者数が急増し、隔離地内での致死率も大幅上昇しました。この「湖北省内での死者数の急増」にこれまでメディアの多くが注目してきましたが、これからは、「湖北省以外の地域での死者数の少なさ」や「湖北省以外の地域での致死率の低さ」に注目する局面にきているのかもしれません。そして、中国以外での新型コロナウイルスによる感染者数は、11日時点で516人となり、中国以外での死者数は香港で1人、フィリピンで1人の2名だけです。

世界保健機関(WHO)は、新型コロナウイルスに対する2つの抗ウイルス薬の臨床実験中であり、「週間以内に予備的な臨床試験の結果が発表される」と表明しております。WHOのテドロス事務局長は、「新型ウイルスの震源である湖北省以外では感染の勢いが過度に激しくなく、加速の兆しも見られないことは良い兆候だ。今週中国入りしたWHO主導の専門家チームによる作業も良好な進展を遂げている。」と述べております。一方、国際通貨基金(IMF)のゲオルギエワ専務理事は12日、「中国での感染拡大についてなおかなり多くの不確実性が残る状況だ。しかし、失われた時間を取り戻すため生産施設が稼働ペースを再び加速させ、在庫が補給される中で、中国経済が早期に回復するというのが、今の基本的な予測だ。」との見方を示しました。

WHOやIMFからの新型ウイルスに関する発言や見通しにより、新型ウイルスに対する脅威が沈静化し始めたように感じられます。また、新型ウイルスの感染拡大ペースが今月になって初めて鈍化した事も、新型ウイルスの脅威を沈静化させ要因となってきました。新型ウイルスによる死者数が増加傾向を続けているものの、湖北省以外での死者数は全体の4%程度に留まっており、新型ウイルスによる中国本土以外での死者数も11日時点で2人に留まっていることも、新型ウイルスの脅威を沈静化させる要因となってきました。また、コロナウイルスと同じ風邪菌の1種であるインフルエンザウイルスが米国内で猛威を振るっており、米国内での今シーズンのインフルエンザによる死者数が1万2000人を超えました。しかし、この時期にインフルエンザが流行することは毎年の事であり、インフルエンザによる死者数が世界全体で毎年10万人前後となっており、多い時で年間65万人に達することもあります。今回の新型コロナウイルスも風邪菌の1種であることを考えると、これまでのメディアやマーケットが新型コロナウイルスに対して過剰反応を続けてきたようにも感じられます。

コロナウイルスとは、風邪菌の1種であり、ウイルスの形状がコロナをまとった太陽のような形状なので、「コロナウイルス」と呼ばれております。これまでコロナウイルスには6種類あり、ヒトに蔓延している風邪のウイルス4種類と、動物から感染する重症肺炎ウイルス2種類が知られています。今回の新型コロナウイルスは、新たに発見された動物から感染する重症肺炎ウイルスです。同じ重症肺炎ウイルスには「SARSコロナウイルス」があり、以前の大流行で致死率9.6%を記録した驚異的なウイルスでした。それに対して今回の新型コロナウイルスの「湖北省以外の地域での致死率」は0.16%であることから、致死率はかなり低いコロナウイルスです。これから気温上昇と共に新型コロナウイルスに対する脅威も更に沈静化することが予想されるだけに、これまで新型コロナウイルスの影響で大幅下落した東京ドバイ原油や東京ゴムRSS3などへの強気な見方も一考かもしれません。