松永総研

北浜の虎と呼ばれた男

2014年11月

原油市場

27日のOPEC総会を前にしてロシアとサウジアラビア、ベネズエラ、メキシコの4カ国が25日に産油国の閣僚会合を開催したが、4カ国が1年間の価格監視で合意したものの、減産では協調しないこととなりました。この会合後にロシアの国営石油会社ロスネフチのCEOは、「供給は需要を上回っているが、それは重大ではなく、長期的に原油価格を押し下げることにはならない。1バレル=60ドルを割り込む水準に下落しても、ロシアにとっては直ちに供給を減らす必要が生じるほど劇的なものとは言えない。」と述べております。この会合前に「ロシアが減産に踏み切る」との見方が優勢であったことから、この会合の結果により昨夜のブレント原油が80ドル付近から78ドル付近まで急落しました。

関係筋によると、サウジアラビアのナイミ石油相は今月に入り、サウジアラビアが単独での生産削減は行わないとベネズエラのラミレス外相に述べたことが伝わっております。ベネズエラやイランは、国家予算の財政収支を均衡させるに原油が100ドルを上回っていることが必要と見られており、その両国は減産に賛成の立場を示しております。一方、OPEC高官から「27日の会合では、サウジアラビアが現行の生産枠の順守を主張する加盟国グループに賛同する立場を示す可能性が高い。」と述べていることも伝わっております。OPECは3年前に生産枠を日量3000万バレルに引き上げたが、先月時点で生産量が生産枠を日量30万バレル上回っているようです。英大手銀行のバークレイズによれば、来年の国際石油市場の需給を引き締めるために日量150万バレルの減産が必要との見通しを発表しております。

OPECは、リーマンショックの年である2008年に日量420万バレルの減産を実施した経緯がありますが、その年はブレント原油が7月に147ドル付近まで暴騰したものの、12月に36ドル付近まで大暴落したことを受けてOPECが大幅減産に動きました。その後、OPECが生産枠を2011年12月に過去最高となる日量3000万バレルに引き上げましたが、その翌年(2012年)にブレント原油が88ドル付近まで下落した時にOPECは減産には動きませんでした。OPECが減産を決定したのは、過去10年間では2006年後半と2008年後半だけです。2006年後半は、ブレント原油が50ドル付近まで急落し、2008年後半は36ドル付近まで急落したことを受けてOPECが減産に動きました。そして今月になってOPEC高官発言により「70ドルまで下がらなければ、OPECは動かない」という発言が伝えられていることから、現在のブレント原油(78ドル付近)では、OPECは減産に動かないと考えるべきかもしれません。

今月6~7日に開催された石油業界の国際会議の際に、サウジアラビアのナイミ石油相が「サウジアラビアには減産の予定はない」との発言を行ったことにより、「OPEC総会で減産は行われない」との見方が広がり、ブレント原油が6日当時の83ドル付近から77ドル付近まで6ドルほど急落しました。これまでのいくつかのサウジアラビア高官発言からも、明日のOPEC総会では、「生産枠は現状維持」との見方が大勢を占めているようです。それだけに「生産枠は現状維持」となったとしても、一時的に原油価格が下落するか、弱材料の織り込み済みとされる可能性もあるのではないでしょうか。すでにこの5ヵ月間でブレント原油が115ドル付近から77ドル付近まで38ドルも下落していることから、ここは明日のOPEC総会で「弱材料出尽くし」のタイミングを狙ってみることも一考ではないでしょうか。

OPEC生産枠とブレント原油
OPEC


ブレント原油
ブレント原油の日足

情報提供 : (株)インベステック
※本画面に掲載されている情報の著作権は、インベステック及び各情報提供会社に帰属しており、無断で使用(転用・複製等)することを禁じます。提供している情報の内容に関しては万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、インベステック及び各情報提供会社は一切の責任を負いません。

東京金

 ドルインデックスのファンドなど大口投資家による買いこし枚数が3週連続で減少しており、ユーロドルも11月7日に2年ぶりの安値となる1ユーロ=1.2356ドルの安値をつけて以来、安値更新が出来ていないことから、ドル買い圧力が徐々に薄れてきたように感じられます。それによりドルの代替銘柄となるNY金の底堅さが増してきたようにも感じられ、ここからNY金に対する強気な見方も一考かもしれません。

 東京金の値動きに大きな影響を及ぼすNY金とドル円の動きを見ると、NY金の底堅さが増してきたように感じられるものの、ドル円の見通しが難しいところかもしれません。「黒田日銀総裁による2発目のバズーカ砲」と称される追加緩和政策の決定により、ドル円が先月末の1ドル=108円付近から今月24日の118円97銭まで11円ほど円安に進みました。

 2012年12月26日に第2次安倍内閣が誕生し、「アベノミクス」と称される政策が発表され、「黒田日銀総裁による1発目のバズーカ砲」と称される追加緩和政策も発表されたことにより、2012年12月からの半年間でドル円が25円ほど円安に進みました。そしてドル円は、年明けから横ばいを続けていたが、8月ごろから急上昇し、「保合い放れに付け」という相場格言通りの展開となりました。月足チャートで見ると、2012年10月からの「8ヶ月間で25円ほどの円安」が第1波動とすると、2014年7月からの「5ヶ月間で18円ほどの円安」が第2波動となります。週足で見ると、先月下旬から5週連続で急上昇したものの、今週になってほとんど上昇していないことから、ここにきて上昇力が弱まってきたように感じられます。これまでの円安の原動力は、「日銀の追加緩和策の決定による円売り圧力」と、「米国の利上げ時期を意識したドル買い圧力」でしょう。しかし、ここに来てドルインデックスの大口投資家による買いこし枚数が3週間連続で減少しており、ドル買い圧力が弱まってきたことから、ドル円の上昇力が弱まってきたのかもしれません。それに加えて「黒田日銀総裁による2発目のバズーカ砲」がかなり織り込まれてきたようにも感じられます。ただ、IMM日本円の大口投資家による売りこし枚数が先週18日時点で9万2454枚ですから、年初から見てもまだ平均的な売りこし枚数でしかないことから、ファンドなど大口投資家による円売りポジションにそれほど過熱感が感じられません。それだけに、ドル円が大きな調整安を形成する可能性が低いと考えるべきかもしれません。

しかし、昨日公開された日銀金融決定会合の議事録(10月31日開催分)では、追加緩和策の決定に対して「9人中4人が反対」となっており、反対派の複数の委員が「経済・物価に対する限界的な押し上げ効果は大きくない」との見解を述べていたことが示されておりました。また複数の委員から、追加緩和による副作用を懸念する声もありました。昨日公開された日銀議事録を見る限りでは、先月末に発表した追加緩和策による効果に少し疑問を抱きます。それを考えると、ここでドル円が調整安となる可能性もあるのかもしれません。

NY金が底堅く感じられるものの、急激な円安進行による警戒も必要であり、東京金の見通しに対して難しさが感じられます。それだけに、ドル円の調整安を待って東京金を「押し目買い」で対処するのも一考ではないでしょうか。



東京金の日足
東京金の日足

NY金の日足
NY金の日足

ドル円の月足
ドル円の月足

ドル円の週足
ドル円の週足

情報提供 : (株)インベステック
※本画面に掲載されている情報の著作権は、インベステック及び各情報提供会社に帰属しており、無断で使用(転用・複製等)することを禁じます。提供している情報の内容に関しては万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、インベステック及び各情報提供会社は一切の責任を負いません。

東京ゴム

 先週末の上海ゴムが約140万枚の出来高を記録し、5月限の出来高も90万枚を突破したことで、上海ゴムの取引中心限月が1月限から5月限に移動しました。さすがに先週末の上海ゴム市場は、1月限で大幅な利益を確定させた売り方が勢いよく5月限に移動してきたことにより急落する場面もありました。上海ゴム5月限は、昨日1.2%高となり、本日は0.8%安(10:10時点)付近で推移し、この2ヶ月間は「1万2500~3500元」の範囲内で上下動を繰り返しているような保合いを続けております。それに対して東京ゴムは、この1ヶ月間半でドル円が1ドル=105円付近から13円ほど円安が進んだことを受けて上昇しました。それにより東京ゴムの値動きと、産地現物価格や上海ゴムとの値動きに大きな違いが生じております。世界の天然ゴム市場の中心的存在である上海ゴムの取引中心限月となる5月限のチャートと東京ゴムのチャートを添付しております。上海ゴムのチャートを見ると、2ヶ月ほど前に記録した安値から少ししか上昇していないことがわかります。今回の3カ国協議では、輸出削減策が合意され、需要を上回る供給を行わないために、生産国で供給を制限することも決定しました。そうしたことや上海ゴムの価格水準を考慮すると、強気な見方を強める必要があるのかもしれません。

上海ゴムの5月限(取引中心限月)
上海ゴム5月限

東京ゴムの日足
東京ゴム日足

情報提供 : (株)インベステック
※本画面に掲載されている情報の著作権は、インベステック及び各情報提供会社に帰属しており、無断で使用(転用・複製等)することを禁じます。提供している情報の内容に関しては万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、インベステック及び各情報提供会社は一切の責任を負いません。

東京とうもろこし

 シカゴコーンの電子取引が昨日15時半比8セント高の3ドル87セント付近で推移しており、11月14日に記録した今月高値となる3ドル88セントまであと1セントに迫っております。しかも昨夜のシカゴ市場で、シカゴ大豆やシカゴ小麦も上昇しており、再びシカゴのコーン、大豆、小麦が足並みを合わせて上昇を始めたようです。

シカゴコーンにとってこの時期は「需給相場」となることから、ファンダメンタルズ的な材料が少ない時期でもあります。この時期は、毎週発表される輸出検証高や、毎月10日前後に米農務省より発表される需給報告などが注目されます。この時期のとうもろこし市場は、ファンダメンタルズ的な材料が少ない時期であることから、ファンダメンタルズ分析よりテクニカル分析に素直に反応したほうが得策かもしれません。シカゴのコーンと大豆と小麦が再び足並みを合わせて上昇し始めたことから、ここは再び東京とうもろこし市場に対する強気な見方も一考ではないでしょうか。


シカゴコーンの日足
シカゴコーン日足

シカゴ大豆の日足
シカゴ大豆日足

シカゴ小麦の日足
シカゴ小麦日足

情報提供 : (株)インベステック
※本画面に掲載されている情報の著作権は、インベステック及び各情報提供会社に帰属しており、無断で使用(転用・複製等)することを禁じます。提供している情報の内容に関しては万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、インベステック及び各情報提供会社は一切の責任を負いません。

中国の利下げにあまり反応しない商品市場

11月26日

中国の利下げにあまり反応しない商品市場

 李首相が中国経済の成長減速に対処するため、新たな成長の原動力を見いだすよう求めたことから、先週末夕方に中国人民銀行が大方の予想に反して利下げを発表しました。利下げ発表直後は、原油市場や非鉄金属市場が反応して急伸したが、その後失速しており、中国の利下げ実施に対して商品市場全体が恩恵を受けていないように感じられます。今回の中国の利下げ実施が大方の予想外の出来事でしたが、中国の利下げ効果に対して疑問視する向きが多かったようです。

 利下げ実施に対し、「不良債権の増加や利益率の伸び鈍化に直面している国内銀行にとって収益悪化につながりかねない。」との意見もあるようです。また、利下げが実施されても、デフォルト増など問題を多く抱えている中小企業に対して、大手銀行が融資に対してこれまでの慎重姿勢を崩さないのではとの意見もあるようです。そして、貸出金利を自由に設定できる信託会社の融資残高が9月末時点で5兆2000億元(約100兆円)にまで膨らんでおり、2年前の利下げ時の2倍にまで膨れ上がっていることから、今回の利下げ実施の効果も薄れるとの見方もあるようです。中国の利下げ実施に対して様々な障害を指摘する向きが多いことから、中国の利下げ実施に対して原油市場を中心とした商品市場全体があまり利下げの恩恵を受けていないようです。

明日の北浜の虎セミナーについて

セミナー1
セミナーバナー

日時・会場

毎週水曜 1900~2000

サンワード貿易㈱ 本社7階セミナールーム

東京都新宿区下宮比町3-2飯田橋スクエアビル7[地図]

概要

有名ブログ「北浜の虎」を手掛けた松永英嗣の

 とことんマニアックなミニセミナー!

ファンダメンタルでコモディティ市場を予想していくのであれば、

 一般的なニュースで流れているような、表面的な情報だけでは

 なかなか勝てません・・・

相場を見続けて実に25年。

ロイターや時事通信にも情報を提供する松永英嗣が

弊社アナリスト兼ストラテジストとしてついに復活!

 長年かかって築きあげた情報網からのマニアックな情報を元に

毎週水曜日にコモディティの今を徹底解析!

サンワード貿易本社7階のセミナールームにて、

 自由形式のミニセミナー。

 今のポジションにお困りの方

トレードがなかなか上手くいかない方  etc

少人数にて開催します。

お気軽にご参加ください。

 個別建玉相談会も実施中です! 

定員

20

参加費用

無料ミニセミナー

講師プロフィール

セミナー写真

松永英嗣 松永英嗣

サンワード貿易(株)のアナリスト兼ストラテジスト

1965年大阪生まれ。

 業界歴25年。

 業界3年目にして歩合外務員として独立、穀物相場を中心に手掛ける。

 法人部時代にはガソリン・ゴムなど工業品銘柄を中心として、商社・当業者・投機筋などへ深く関わり特殊知識を深める。

 先物業界紙・貿日新聞の「天地人のコラム」を5年ほど連載。

10年前にブログ「北浜の虎」を立ち上げ、現在はブログ名を「松永総研」に改名。

 実に15年間、日々相場の最新情報を配信し続けている。 

主催

サンワード貿易㈱

セミナーバナー

メール会員限定

本日の製作記事は、メール会員限定でメールにて送らせていただきます。
会員の方々は、メールの内容を参考にしてください。

無料メール情報会員の申し込みはココをクリックして申し込んでください。
無料メール情報会員の申し込み

ゴムパート4

 本日の上海ゴムは、12月限(当月限)が2.3%安、1月限が0.4%高、5月限が2.3%安で取引を終えました。上海ゴムの新取引中心限月となる5月限の本日の出来高が約93万枚を記録し、前取引中心限月である1月限が約39万枚となりました。5月限の先週末時点での1日の出来高が20万枚程度であったことから、今週になって「取引中心限月の移動」が急速に行われたことが伺えます。また、本日の上海ゴム市場の出来高の94%が1月限と5月限に集中しており、これも上海ゴム市場特有の現象です。そして、本日の上海ゴムの出来高が全体で140万枚に達しており、今年後半で最高出来高を記録しました。また、2日連続で1日の出来高が100万枚を大きく上回ったことも今年後半ではじめてのことです。本日の東京ゴム(日中取引)の出来高が8328枚ですから、東京ゴムの170倍ほどの出来高を本日の上海ゴムが記録したことになり、改めて上海ゴムの市場規模の大きさを痛感しました。そして、上海ゴムが安値圏で大商いを記録したことにより、底値形成されたという見方も一考かもしれません。テクニカル的にも安値圏で出来高が極端に増加するところが底値となる傾向があります。上海ゴムの昨日20日の出来高でも約120万枚にまで膨らんで今年後半で最高となりましたが、本日は約140万枚にまで膨らんでおり、2日連続で出来高が急増したことにより底値形成した可能性もあります。

 本日の東京ゴムは、上海ゴムの下落や円高進行、そして納会後のサヤすべりなどにより下落することとなりました(東京ゴムの納会は、今朝の寄付きです)。本日は、上海ゴムの5月限が急落しても1月限がプラスサイドで取引を終えるなど、注目する動きがありました。昨日の上海ゴムでは、HSBC製造業PMIの発表内容が悪化したものの、その発表後10分間で上海ゴムが1.2%安付近から1.7%高付近まで急進する場面もありました。また、先週末まで上海ゴムの当月限と半年先の限月との価格差が1500元(キロ=38円換算)ほどありましたが、今ではほとんど差がなくなりました。今週の上海ゴム市場は、4ヶ月に一度の取引中心限月の移動、大幅順サヤから同サヤに急変、異常なほど膨らんだ出来高、悪材料に反して急伸など、色々なマーケットからのシグナルがあった1週間となりました。こうした多くのシグナルは、上海ゴム市場のトレンド変化を示しているのではないでしょうか。

みんコモコラムアワード2015
ColumnAward 2015特別賞

「特別賞」を受賞しました

詳細はこちら
重要事項
通常取引を始めるにあたって
スマートCXを始めるにあたって
重要事項説明
取引開始基準
契約締結前交付書面
金融商品取引法に基づく開示
勧誘方針
個人情報保護法
反社会勢力へ対する基本方針
免責事項
*掲載される情報はサンワード貿易株式会社(以下弊社)が信頼できると判断した情報源をもとに弊社が作成・表示したものですが、その内容及び情報の正確性、完全性、適時性について、弊社は保証を行なっておらず、また、いかなる責任を持つものでもありません。
*弊社が提供する投資情報は、あくまで情報提供を目的としたものであり、投資その他の行動を勧誘するものではありません。
*本ブログに掲載される株式、債券、為替および商品等金融商品は、企業の活動内容、経済政策や世界情勢などの影響により、その価値を増大または減少することもあり、価値を失う場合があります。
*本ブログは、投資された資金がその価値を維持または増大を保証するものではなく、本ブログに基づいて投資を行った結果、お客様に何らかの損害が発生した場合でも、弊社は、理由のいかんを問わず、責任を負いません。
*投資対象および銘柄の選択、売買価格などの投資にかかる最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようにお願いします。
以上の点をご了承の上、ご利用ください
最新記事