松永総研

北浜の虎と呼ばれた男

2015年05月

ゴム市場パート5

 東京ゴムの日中取引は、ドル円が前日より15銭ほど円安に進み、上海ゴム9月限が0.6%安付近で推移していましたが、3.7円高の241円で取引を終えました。東京ゴムの日中取引の終了後から上海ゴムが上昇に転じてプラス転換となり、1.2%高の1万5010元まで上昇して取引を終えました。この上海ゴムの上昇を受けて、東京ゴムの夜間取引での上昇が予想されます。

 昨日の上海ゴムは、10時半頃に4.8%高の1万5150元まで上昇しましたが、午後からの中国株の暴落を受けて高値から3%ほど急落しました。しかし、本日再び1万5000元台に乗せてきたことは注目でしょう。しかも本日の上海総合株価指数は0.2%安です。

ゴム市場パート4

 ドル円が前日より15銭ほど円安に進み、上海ゴム9月限が0.6%安付近まで下落しておりましたが、東京ゴム先限の日中取引は、3.7円高の241円で取引を終えました。15銭の円安は、東京ゴムの換算値を30銭ほど上昇させる計算です。本日の東京ゴムの急伸は、円安では説明出来ません。なぜ上海ゴムの小幅安に反して東京ゴムが急伸したのかを考える必要がありそうです。

東京ゴムの日足

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東京ゴムの日足

日本円分析

 2012年12月26日から第2次安倍政権が発足し、「アベノミクス」と呼ばれる政策により、低迷していたドル円が長期上昇トレンドに突入しました。ドル円の月足チャートを添付しております。これまでのドル円の上昇トレンドは、上昇期と半年間ほどの保合い期間を繰り返してきたことに注目でしょう。ドル円は、今月15日の1ドル=119円付近から28日に一時124円台まで5円ほど急騰しました。こうした急激な円安進行の原因は、ファンドなど大口投資家による日本円の売り越し枚数が極めて低水準にまで減少していたことが原因とされております。

 ドル円が昨年4月の1ドル=101円付近から昨年12月の121円付近まで20円ほど円安が進んだときは、IMM日本円の大口投資家による売り越し枚数が6万枚ぐらいから12万枚程ぐらいまで増加しました。さすがに大口投資家による売り越し枚数が昨年12月に12万枚にまで増加すると、日本円の売られすぎが警戒され、それまでの円安進行が止まりました。2013年10月から2014年1月にかけてドル円が10円ほど円安に進んだときも、IMM日本円の大口投資家による売り越し枚数が12万枚付近まで膨らんだところで、それまでの円安進行が止まりました。昨年の1月や9月にIMM日本円の大口投資家による売り越し枚数が12万枚付近まで増加したタイミングでそれまでの円安進行がストップしたことから、そのあたりが今後の円安進行の参考となりそうです。ちなみに、5月19日時点でのIMM日本円の大口投資家による売り越し枚数が2万2005枚ですから、ファンドなど大口投資家による日本円売りに過熱感がまったく感じられません。

 そして注目は、IMM日本円の大口投資家による売り越し枚数が4月28日に5493枚まで減少し、近年最低の売り越し枚数を記録したことでしょう。年初の大口投資家による売り越し枚数が約9万枚であり、その後、大口投資家による売り越し枚数が減少を続けました。3月中旬の大口投資家による売り越し枚数が5万枚程度ありましたが、4月になって激減し、4月28日時点で5493枚まで減少しました。添付しているIMM日本円の大口投資家による売り越し枚数のグラフを見れば、どれだけ大口投資家による売り越し枚数が減少していたかが伺えます。大口投資家による売り越し枚数が4月下旬にほとんどなくなったことから、大口投資家が5月になって再び売り始めた動きに反応し、ドル円が急騰したようです。米国の商品市場でも、大口投資家による買い越し枚数のピークが天井となり、売り越し枚数のピークが底となる傾向もあります。こうした大口投資家のポジション変化を見ると、IMM日本円の大口投資による売り越し枚数の増加が始まったばかりであることが理解できるのではないでしょうか。それにより、しばらく円安基調が続くと考えるべきかもしれません。

ドル円の月足
月足ドル円の

IMM日本円の大口投資家による売り越し枚数
日本円のファンドポジション

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ゴム市場パート3

 今週の東京ゴムの急騰は、あまりにも多くの強材料が重なったことが要因となりました。それらの強材料は、①産地大手ゴムメーカーの安値非売運動の広がり、②タイ政府の価格引き上げ方針、③長引く減産期、④プランテーションの大幅縮小、⑤強烈な円安進行、⑥4カ国連合の誕生、⑦東京ゴムの産地現物価格に対する大幅割安換算などが挙げられます。

①は、インドネシアの大手ゴムメーカーであるスリトラン・アグロインダストリーとハルシオン・アグリが大幅な価格引き上げ計画を表明し、インドネシアやタイの複数の大手ゴムメーカーがそれに賛同したことです。スリトラン・アグロインダストリーの広報担当者は、「シンガポールゴム取引所の相場はもはやゴム生産の実際のコストを反映していない。」と述べ、シンガポールゴム取引所への受け渡しをやめることを表明しました。スリトラン・アグロインダストリーとハルシオン・アグリの天然ゴム生産高は、世界全体の2割を占めます。そうした産地での安値非売運動の広がりが注目されております。

 ②は、タイ農業協力部から「タイ政府は2ヶ月以内にRSSをキロあたり65バーツにまで押し上げる計画をしている。」ということが伝えられたことです。それにより今月上旬からの東京ゴムや上海ゴムの下落基調に反してタイの現物価格がじり高基調を続けております。タイ政府の政策を受けてゴムプランテーションが大幅縮小となり、タイのRSS3号現物価格が昨日時点で61.59バーツまで上昇しております。

③は、インドに記録的な熱波が到来し、タイでも乾燥気候が続いていることから、天然ゴムの長引く減産期が指摘されていることです。タイのパイナップルは、干ばつの影響で出荷価格が2倍ほどに急騰しました。例年であれば、6月になるとタイが雨季入りとなり、天然ゴムの生産高が増加に転じます。しかし、春頃からエルニーニョ現象が活発化し始めたことを受けて、タイの雨季入りが遅れると見られております。赤道上の海水面上空には、暖かい海水温の影響で雲が多く発生し、その雲を熱帯集束帯といいます。熱帯集束帯が発達している時に衛星写真を見れば、赤道の海面上空に雲が帯状に広がっているのが確認出来ます。しかし、現在の衛星写真では、東南アジア側に熱帯集束帯がほとんど確認出来ません。エルニーニョ現象になると、赤道上の南米側海面温度が上昇し、東南アジア側海面温度が低下します。それにより、海面温度が上昇した南米側の熱帯集束帯が発達して大雨を降らせ、海面温度が低下した東南アジア側の熱帯集束帯が勢力を弱めて干ばつを起こすとされております。気象庁は、秋にかけてエルニーニョ現象が続く見通しを発表しております。それにより、天然ゴムの長引く減産期が警戒されております。

④は、タイの農業担当副大臣が同国天然ゴムプランテーションを100万ライ(16万ヘクタール)減少させたことを発表しており、2015年の同国天然ゴム生産が従来見通しの440万トンから390万トンに減少する見通しとなったことを発表したことです。これにより、今年の世界需給が供給不足に転じる可能性が高まっております。

⑤は、ドル円が1ドル=124円台にまで急騰したことです。更なる円安進行に注意が必要となりそうです。

⑥は、天然ゴムの3カ国連合(タイ、インドネシア、マレーシア)にベトナムが加盟することとなったことです。これまでの3カ国連合が4カ国連合となり、新たに発足した4カ国連合は、「世界生産の70%を占める4カ国連合の協力が、ゴム価格を後押しする原動力となる。」と述べており、価格テコ入れに対して前向きな姿勢を示しております。

⑦は、昨日のタイのRSS3号オファー価格(189セント)を円換算すると、1.89ドル×123.8円=約234円換算となり、輸入諸経費をキロあたり5円で計算すれば、輸入採算価格が約239円となることです。それにより東京ゴムの当月限が、輸入採算価格を14円ほど下回っている計算となります。東京ゴムが26日から3連騰しましたが、それでも輸入採算価格を大幅に下回っているようです。それにより、東京ゴムの急騰に警戒するところかもしれません。

ゴム市場パート2

 本日の上海総合株価指数は、昨日の暴落(6.5%安)の流れを引き継いで寄付き直後に4%安付近まで急落しましたが、取引開始後30分間で前日比変わらず付近まで戻しました。上海ゴムは、中国株の寄付き直後の急落により一時2.5%安付近まで急落しましたが、現在は前日比変わらず付近まで上昇。東京ゴムは、今朝から4円ほど上昇し、11時15分時点で2円80銭高の240円30銭です。東京ゴムが240円台に回復しており、28日に記録した年初来高値まであと2円60銭に迫りました。

原油市場

 昨夜のNY原油は、20時ごろから1ドルほど下落し、24時ごろに56.52ドルまで下落しましたが、EIA週間石油在庫統計の発表を受けて上昇し、現在は58.3ドル付近まで上昇しております。NY原油は、3月18日の42.03ドルの安値から5月6日の62.58ドルの高値まで20.55ドル上昇していることから、その3分の1押しは、5月6日の高値から6.85ドル下落した55.73ドルとなる計算です。昨夜のNY原油は、その3分の1押しの水準まであと79セントにまで迫りました。EIA週間石油在庫統計がなければ、「3分の1押し完了」となっていたのかもしれません。

 昨夜のEIA週間石油在庫統計は、原油が90万バレル減予想に対して280万バレル減、ガソリンが40万バレル減予想に対して330万バレル減、ディスティレートが30万バレル減予想に対して110万バレル増、製油所稼働率が0.3%上昇予想に対して1.2%上昇の93.6%となり、クッシング原油在庫が43万バレル減でした。この発表では、原油とガソリンの在庫が予想以上の大幅減少となり、注目されたのが、製油所稼働率の大幅上昇とガソリン在庫の大幅減少でした。製油所稼働率が年初来最高を記録し、ガソリン在庫が年初来最低を記録しました。製油所稼働率は、原油暴落を受けて1月16日に85.5%まで低下しましたが、4月頃から上昇基調を鮮明としており、石油製品需要の好調さを示しております。そして、製油所稼働率の4月からの上昇により、原油からガソリンへの精製が大幅に進んだことにもかかわらず、それでもガソリン在庫が年初来最低を記録するほどガソリン需要が好調だったと受け止められたようです。ここまで堅調な需給を示されれば、NY原油の下値は限定的かもしれません。

全米ガソリン在庫
全米ガソリン在庫

米製油所稼働率
製油所稼働率

ゴム市場

 昨日の上海ゴムは、前場で上昇して一時1万5000元台に突入したものの、午後からの中国株の急落を受けて、上げ幅を削りました。その後の夜間取引は、1.4%安と小幅安でした。そうした上海ゴムの失速に昨日の東京ゴムも上げ幅を削りました。

 昨日の上海総合株価指数は、前場で小幅高となって5営業日連続で年初来高値を更新しました。しかし、中国人民銀行が一部の金融機関に対象を絞ってレポを実施し、金融システムから数百億元規模の資金を吸収したことをきっかけに中国株が急落し、上海総合株価指数が6.5%安まで急落して取引を終えました。そうした中国株の急落に昨日の上海ゴムも反応して上げ幅を大きく削りました。中国人民銀行のレポ実施を受けて、一部の証券会社が信用取引融資の条件を厳格化したことにより、中国株の下げ足が早まりました。

中国政府は、昨年末から3度も政策金利を引き下げ、株式投資や不動産投資の規制緩和を行い、度重なる経済刺激策を実施してきました。そして今週25日には、大幅な輸入関税の引き下げによる内需刺激策を発表し、それを受けて中国株の上げ足が速まりました。週明けに内需刺激策を投入したことで中国株の上昇スピードが加速し、それを受けて中国人民銀行が28日にレポを実施して市場の沈静化に努めたようです。昨日の中国株の急落に対して欧州株式市場や米国株式市場がほとんど反応していないことから、それほど警戒する必要がないと受け止められているようです。中国政府が週明け25日に内需刺激策を投入した直後なだけに、中国政府のこれまでの緩和政策路線に変更は無いと受け止める向きが多いようです。ただ、先週より中国株の一部で大暴落する銘柄もあったことから、昨日の中国人民銀行によるレポ実施に警戒が高まったようです。

中国の太陽光発電メーカーである漢能薄膜発電の株価が先週20日に、1時間で47%も大暴落し、取引停止に陥ったことが話題となりました。同社会長の李河君氏は、フォーブス誌で「中国で最もリッチな男」として称えられるほどの人物ですが、同社株価が1時間で47%下落したことにより、「1時間の株価急落で李河君氏が資産を約150億ドル(約1兆8000億円)失った。」と報道され、注目されました。漢能薄膜発電の株価は、この1年間で約10倍にまで上昇していたことから、先週20日の大暴落で半値なったといっても、1年前の約5倍の株価水準を保っております。

週明けからの東京ゴムや上海ゴムの乱高下に対し、産地現物価格はじり高基調を続けており、比較的安定した値動きとなっております。昨日のシンガポールゴムRSS3号が187.5セント、タイのRSS3号オファー価格が189セントです。オファー価格を円換算すると、1.89ドル×123.8円=約234円換算です。オファー価格に対する輸入諸経費をキロあたり5円で計算すれば、輸入採算価格が約239円となります。それに対して東京ゴムの当月限が225円付近で推移していることから、輸入採算価格を14円ほど下回っている計算となります。ここまで大幅割安換算となれば、ちょっとした弾みで急騰する可能性もありそうです。

ゴム市場パート7

 週明けから円安に大きく進んだことが主要因となり、東京ゴムが急騰したと説明するには、かなり無理があります。確かに円安により東京ゴムがいくらか上昇しましたが、円安は東京ゴム上昇の主要因とはなりません。週明けよりドル円が1ドル=121円50銭付近から124円付近まで2円50銭ほど円安に進み、それによる東京ゴムの国内換算値の上昇幅は4円50銭程度の計算となります。週明けより東京ゴムが20円ほど上昇しました。しかし、円安進行とあまり関係のない上海ゴム9月限(取引中心限月)も週明けから1100元ほど上昇しました。週明けからの上昇率は、東京ゴムで約9.5%、上海ゴム9月限で約8%となり、東京ゴムの上げ幅のほうが僅かに上回るだけです。こうして週明けからの上海ゴムと東京ゴムの上げ幅を見比べれば、東京ゴムの大幅上昇の主要因が円安によるものではないことに気が付くのではないでしょうか。週明けからの東京ゴム上昇に対し、主要因が円安によるものと分析すれば、今のゴム市場の本質を見極めることが難しくなりそうです。


みんコモコラムアワード2015
ColumnAward 2015特別賞

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