英国国民投票に対する大手ブックメーカーであるベットフェアの昨日23時時点でのオッズは、「残留92%、離脱8%」となり、残留派優勢との見方から昨夜のNYダウが230ドル高となりました。しかし、今朝から開票作業が始まると、離脱派優勢となり、14時時点でNYダウの電子取引が800ドル安まで下落しました。本日の日経平均株価は1286円安の1万4952円で取引を終えました。
本日の開票結果を受けて残留派のリーダー的存在であるキャメロン首相は、「英国民は別の道を行くことを明確に選択した。従って、英国をその方向で導いていく新しいリーダーが必要だと考える。」と述べて辞意を表明しました。また、キャメロン首相は、今後3カ月は続投し、10月までに次の首相に引き継ぐ意向を明らかにしました。40年余り在籍していたEUから英国が離脱することとなり、その影響がどこまで及ぶのかが注目されております。これは英国一国の問題ではなく、EU全体の問題でもあり、今後のEU経済の動向を不安視する向きもあるようです。そして、今回の英国国民投票の結果が米国や日本にとっても「対岸の火事」では済まされないことから、世界経済に対する不安が高まる可能性も秘めております。
本日の日本時間20時半からG7が電話会議を行います。G7としては、マーケットを早めに沈静化させたい狙いがあるようです。EU諸国の多くが低迷する経済成長に苦しんでおり、EU経済にとってドイツに次ぐ経済大国である英国を失うことは大きな問題となりそうです。しばらくリスクオフの流れが続くことも考えられるだけに、ここは金投資に対して注目ではないでしょうか。
今月になって弱気筋として知られる著名投資家のジョージ・ソロス氏が9年ぶりにトレーディングを開始したことが注目されました。ソロス氏の莫大な資産を運用するソロス・ファンドは、ソロス氏から任命されたファンドマネージャーによりこれまでも運用を続けてきました。そうしたソロス・ファンドの動向がたまに話題となることもあるようですが、ソロス氏自身がトレーディングに参加することはほとんどありません。ソロス氏が前回トレーディングに参加したのは、2007年のことであり、その時は、米不動産市場で大量の弱気ポジションを仕掛けました。その翌年のサブプライム・ショック(リーマン・ショック)でソロス氏が10億ドルを超える利益を得たことは有名です。今回、ソロス氏は、世界経済の先行きと、市場が近く大きく変動することへの懸念から米国株式市場に対して大規模な弱気のポジションを取るように指示し、その反面で金や金鉱山株の買いを指示しているそうです。ソロス氏は、英国国民投票でEU離脱が決まった場合、ポンドは対ドルで20%余り急落し、1992年にポンドが欧州為替相場メカニズム(ERM)離脱に追い込まれた時よりも破壊的な減価が起きかねないとの見通しを示しました。ソロス氏は6月21日付の英紙ガーディアンの寄稿で、「英国のEU離脱は一部の人々を非常に金持ちにする一方、大部分の有権者がかなり貧しくなるだろう。離脱が決まれば、この週末は暗黒の金曜日となり、普通の人々に深刻な影響をもたらす恐れがある。」と述べております。今後のマーケットを考えると、「リスクヘッジの金投資」に注目する必要もありそうです。