6月29日
原油市場パート3「イスラエルとサウジアラビアの関係」
イスラエルのネタニアフ首相と同国鉄道大臣は本日、イスラエルとサウジアラビアをつなぐ鉄道建設プロジェクト「平和の鉄道計画」を進めていくことで合意したことを報じています。この報道からも、イスラエルとサウジアラビアとの友好関係がかなり進んでいるようです。イスラエルとサウジアラビアをヨルダン経由でつなぐ「平和の鉄道計画」は、イスラエルとサウジアラビアの将来の両国間の協力を見据えたものであり、サウジアラビアとしては、紅海やスエズ運河、ホルムズ海峡経由のカイロに加えて、ハイファから地中海を越えて欧州市場とつながる重要なホットラインとなります。
中東では、「サウジアラビアを中心としたイスラム教スンニ派政権国家」と「イランを中心としたイスラム教シーア派政権国家」との対立が紀元前より続いております。そして、ユダヤ教国家であるイスラエルと、サウジアラビアやイランなどイスラム教国家との対立も続いております。イスラム教内でもスンニ派とシーア派で対立し、ユダヤ教とイスラム教も対立しているのですが、ここにきてイスラエルとサウジアラビアの親交が深まってきた背景には、「イラン核合意におけるサンセット条項」が原因かもしれません。
中東諸国の中でイスラエルだけが唯一の「核保有国」であり、その優位性を保持する為にイスラエルは、イランの核開発を空爆によりこれまで何度も阻止しようとしてきました。イランが核保有国となれば、イスラエルにとって脅威ですが、イランと敵対しているサウジアラビアなどイスラム教スンニ派政権国家にとっても脅威です。現在のイラン核合意には、一定期間後に核開発の制限を解除する「サンセット条項」が盛り込まれており、このままいけば、2025年以降からイランが核開発を再開することになります。それによりイランは、核開発の制限解除に向けて弾道ミサイルの開発を行っているのかもしれません。
サウジアラビアとしては、イランが核保有国となった時に備えて、既に核保有国であるイスラエルと今のうちに親交を深めようと考えているのかもしれません。しかも、「平和の鉄道計画」の完成によりサウジアラビアから欧州へ向けた鉄道ルートが完成すれば、サウジアラビアの経済発展にもつながります。一方、イスラエルがサウジアラビアなどイスラム教スンニ派政権国家との親交を深めれば、イランの核開発阻止に向けてイスラエルとイスラム教スンニ派政権国家による共闘体制が整います。これからは、トランプ政権がイランへの経済制裁を強め、それにイスラエルやサウジアラビアなどが協力する体制がより鮮明となるのかもしれません。