7月31日
白金市場
南ア国営電力会社のエスコムは、全国の施設でピケを実施している労働者により、今週の電力平均配分への危険性が高まっていることを伝えております。ピケとは、施設に見張りを置き、他の労働者へのストライキ参加の促進等をする行為です。エスコムでは、労使交渉が2カ月間も続いており、先週27日の労使交渉でボーナス支払いの交渉について決裂しました。エスコムは今週30日、「ピケ活動による脅迫や破壊活動、職場への接近の妨害行為のために、いくつかの発電所で影響を受けた。」と公表しております。そして、「電力平均分配の危険性が高まっております。」と伝えております。
エスコムでのストライキは、南ア政府による法律で禁止されております。これは、電力会社でのストライキは南ア経済に与える影響が大きすぎるからです。それだけに、ストライキが発生すれば、大量の電力が必要となる白金鉱山の多くが稼働停止に追い込まれる可能性も高まります。
環境問題を考慮して中国政府が石炭の生産量削減策を実施しており、それを受けて大連コークスは、この2年間で4倍ほどにまで高騰しました。それにより石炭価格が世界的に大幅上昇しました。南アの電力発電は石炭発電に依存していることから、石炭価格の高騰がエスコムの経営を大きく圧迫することになりました。しかも、南アのインフレ率が5.26%まで上昇していることにより、5%程度の賃金アップであれば、実質的には賃金据え置きに等しいことになります。2カ月間もエスコムの労使交渉が続きましたが、とうとう今週になってエスコムの電力平均分配への警戒が高まっております。エスコムからの電力平均分配が減少する事態になると、安全面を考慮して稼働停止させる白金鉱山が増える可能性もあります。
南アの金や白金の鉱山は、世界的に歴史が最も古いのが特徴であり、30~40年ほど前であれば、世界の金や白金の生産のほとんどが南ア鉱山によるものでした。それにより今では、掘削現場の深度が深いところで地下2500m付近にまで達します。それにより、深い作業現場では地熱も高く、普通の状態では掘削作業することは出来ません。それを解決する為に地上で大量の氷を精製し、大量のクラッシュアイスを地下に投入して掘削現場の温度を下げます。また、深い作業現場では、エレベーターで降りるのに1時間ほどかかるそうです。更に、大量の空気を地下の作業現場に送り込む必要があります。そうした南ア白金鉱山の構造により、南アの白金採掘には、大量の電気が必要とされます。ここでエスコムからの電力平均配分へのリスクが更に高まることになれば、「南ア白金鉱山の稼働停止の可能性」に反応してNY白金が大幅高となる可能性もあります。ここは、東京白金に対して強気な見方も一考ではないでしょうか。